軍師、改善を行う

「そういった事態を避けるためにも我々は倒れる訳にはいかないのです・・・そうなればもう預言があろうとも、いえ預言と出しても誰も止まる事など無くなるのですから」
「はい・・・改めて身に染みました・・・我々は失敗出来ないことや、その為には気を引き締めねばならないということを・・・!」
孔明はそんなダアトの苦境を防ぐためにもと言い、トリトハイムもまた使命感を燃やす。そんな悲劇を起こしたくないと。
「そう理解していただいて何よりです・・・明日になれば私はしばらくダアトを留守にします。後は他の詠師の方々と共に手はず通りによろしくお願いいたします」
「・・・丞相がいないことを悟られぬこと、そしてダアト内の人員配置を変えることですね」
「はい・・・前者に関しては特に問題ではありません。元々私は人前に現れるような形で仕事をしていませんし、ダアト内で私の存在を見聞きしたことのある人員の数もそう多くはありませんからね。それに私の周りの人員は大詠師以外は私の息のかかった人員で統一していましたから、まず余程の事がなければ私の不在に気付く事はないでしょうからね」
「ただ問題となるとしたなら、人員配置の方でしたね・・・」
「えぇ、こちらに関しては慎重にならざるを得ません・・・現在のダアトは預言保守派と改革派により二分された状況となっていますが、かといってそのどちらもが大詠師に導師の意志を深く汲んでいたり息のかかった人物達ばかりという訳でもありません。むしろそうでない人物が多数を占めているといった方がよろしいでしょう」
その上で孔明は後の事を頼むと言いつつも人員配置の事について、慎重にいかねばならないと語る。



・・・孔明が言った通り、預言保守派と改革派は何もモースにイオンの息のかかった人物達だけで構成されている訳ではない。むしろ息がかかってないからこその集まりなのだ。大詠師は何をおいても預言を遵守し、導師は預言の在り方についてを今までにない形を探ろうとしている・・・そういった姿勢のどちらを好ましいと思うか、それらが対立の図式として組織を二分するような形でだ。

そんな形の物が故に別に保守派か改革派か・・・それらのどちらに属しているかで保守派ならモース、改革派ならイオンに程近い位置で働けるなどといった風に振り分けられた事はない・・・まぁイオンはともかく、モースの場合はそれらを踏まえた上で配下に加えているのだがそれでもそれらが全てと言うわけではない。

それらの対立に加わらないがどちらに寄った考えはあるもの、どちらにも寄らない考えを持つもの、実は孔明達に近い考えを持つもの、そしてヴァン達のように内心ダアトやローレライ教団や預言に不審を持つもの・・・挙げれば数はキリがなくなるが、そういった表向きとは違う考えを持つものもいるのだ。事実、アニスの両親もモースにイオンの両方に対して敬意を持っている上でモースのように誰が死んでも預言が達成されればそれでいいという考えなど持っていない。

故に孔明達からすれば公然と保守派と言い、やろうとしていることに対して難癖をつけてくるだろう人物を引き入れることなど論外なのだが、かといって保守派と公言してないなら味方に引き入れる・・・といった安易なやり方も出来ないのだ。もしもその人物の考えが危険な物であれば、今の状況から一転して一気に孔明達の身の危険に繋がる為に。












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