軍師、改善を行う

「その件に関しては問題は然程ありません。神託の盾の内部の事に関しては先に言ったような形で、教団の内部の中でもそうそう知られてはいませんからね。最悪ある程度修練した人物があの鎧を着て立っていれば、大抵のダアトの人間は誤魔化せます。更に言うなら配置替えをしたからこうなったとでも言えば、前に誰がここにいたと知っていたり覚えていた人がいてもそれで通ります。それが預言により詠まれた事と、そう付け加えれば尚更です」
「・・・預言だからと大詠師が好き勝手に振る舞うのと同じようでいながらも真逆な事をすれば、誤魔化すのは容易いというわけですか・・・」
「預言だから・・・ある意味では魔法のようでいて、免罪符のようでいて、それでいて・・・隠れ蓑にはこれ以上ない程に便利な物です。預言と言うものは。だからこそそう言えばまず教団の人々なら疑うことはないでしょう」
「・・・逆を言えばそこで疑問を差し挟め無いことが、大詠師や謡将のような存在の行動を見過ごしてきた原因・・・と言うことですか・・・」
そのヴァンの配下の神託の盾に関しては大した問題じゃないと言ってのけていく孔明に、トリトハイムはまた苦い想いを抱く。預言を第一に考え行動してきたことが、思考能力の低下に陰謀を止めることが出来ない理由・・・それも大本は預言からくるものだと孔明に言われたも同然な事に。
「そういうことになりますが、目下の状態としては特に謡将の配下達に関しては我々と共に付いてきた彼らに任せておけば問題はないでしょう。それでももし誰かが謡将の配下達についてを気付いてしつこく追求してきたとしたなら、彼らの基地についての存在を知り不穏な計画を察知したからこその行動だといったように返してください。一応彼らの基地の中の証拠品の押収は明日にでも済ませるようにとは言ってありますし、どうしても納得いかないというなら基地に連れていっていただいても構いませんがそれでも聞かないという場合は最悪の可能性も考え、その方を牢に繋いでください」
「牢に繋ぐ、ですか・・・?」
「そこまでしても尚彼らの処遇について不満を持つような方となれば竹馬の友と呼べるような間柄の物か、もしくは私の把握していない謡将の考えに影響された物かのどちらかになります。前者もそうですが、後者であった場合は尚のこと放っておけば取り返しがつかないことを起こしかねません」
「それを防ぐためにも、牢に繋ぐのですか・・・」
「そういうことになります」
孔明はさりげにすんなり肯定しつつそれでもヴァンの配下達の事を求めてくるなら牢に入れるように言い、トリトハイムは苦い面持ちになる。
「・・・お気持ちは察します。ですが今ここでつまずくような事があれば私達だけが罰を受けるだけならまだしも、我々を信じると付いてきた兵達に導師に果てはマルクトまでと犠牲になることは避けられません。もしものことを無くすための手段とそう思い、ダアトをまとめられてください」
「は、はい・・・分かっているのですが・・・やはりどうも、そこまで用心深くならないといけないのかとも思ってしまうと色々と考えてしまって・・・」
「そのお気持ちは分かりますが、しばしの辛抱と共に心を鬼にしてください。下手に情に流され感情のままに行動してしまうことは望ましい事ではないのですから」
「はい、承知しています・・・」
そんな様子に孔明は後を任せるのだからしっかりするようにと言い含めると、トリトハイムは理解してると返しつつもやはり重い表情のままである。この辺りは元の人格に性格がやはり影響が大きいのだろう。








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