「そのような体制ですから、当然大詠師は謡将の選ぶ人員について事情を詳しく知ることもありませんでしたし知ろうとも思ってはいないでしょう。それにあくまで私は直接事情を聞いて動機を知りましたが、その動機もあくまで本人が話してくれからであって言い逃れは十分に出来ますし、大詠師も自分の役に立つなら人柄など気にするような方ではありませんからね。そもそもあの方は私を含め特定の誰かと親しくといった行動を取ることに感情を持つことなど、預言の達成に必要ならそうすると言った程度にしか考えていないでしょうからね」
「だからこそ、謡将が集めた人員について何の疑問も差し挟まなかった・・・というところですか、大詠師は・・・」
「えぇ、全く。そう理解しているからこそ、謡将もリグレット達のような存在を集めることが出来ているのです」
「・・・あの・・・何故謡将はそんな人員達をそのようなことをしてまで集めているのでしょうか？そんな人員が集められているとなると、あまりいい予感がしないのですが・・・」
（来ましたね・・・この質問が）
そのまま話を進める内にトリトハイムが不安だとばかりにヴァンの目的について聞いてくるが、孔明は内心で来たと考える。望み通りの質問だと。
「・・・その質問にお答えする前に、先に前置きをさせていだきますが・・・これより話す話は大詠師に預言の事よりも衝撃的な中身になります。是非とも皆様に聞いていただきたいことではありますが、覚悟を決めていただくことをお勧め致します」
「か、覚悟とは・・・それほどのことだというのですか、謡将の事を聞くことが・・・？」
「はい、リグレット達から話を聞いた時には流石に私も驚きましたが・・・彼女達を集める目的及び、動機についてこういうことだったのかと納得もしました。ただその事実を聞いて受け入れるには覚悟が必要になります・・・お聞きしますか、皆さん？」
「・・・ここまで聞いてしまった以上、後には引けません。他の皆も同様の筈です・・・お聞かせください、丞相」
「・・・分かりました。では少々長くなりますが、お話しましょう」
それでも慎重といった姿勢を崩さず前置きを置いて話を聞くのかを問う孔明に、トリトハイム達が真剣な様子で頷き話すと切り出す。本題についてを・・・





















・・・それから孔明は前置き通りに長い話をした、ヴァンがどのような動機で行動していたのかに最終的な目的についてを。



「・・・と言うわけですが、今までの話を聞かれてどう思われましたか？」
「・・・正直、信じられない中身ではありました・・・ですが、同時に納得もしました・・・リグレットを初めとするただならぬ面々を集めた理由がそういう物だと言うことを聞いて、謡将がそうする理由があるということを・・・」
「・・・信じていただいてありがとうございます、皆様」
・・・それで長い間話をしてヴァンについてを伝えた孔明にトリトハイム達は神妙な面持ちで納得したと言い、孔明はそっと頭を下げる。
「それで、その・・・大方話を聞いたので見当はつくのですが・・・やはり大詠師に謡将達の事情を話さなかったのは、信じてくれないと判断した上ででしょうか？」
「えぇ、そうなりますが・・・それ以上に言葉と証拠を示し、大詠師の協力を得て謡将達をどうにか出来たとしても我々の身の安全が保証されるとはとても思えなかったからです。様々な理由があったからとは言え私が大詠師に事実を黙って動いていたことに、リグレット達は私に付いてくれたとは言え謡将に付いた前歴があります・・・その事を考えれば全てが終わったなら自分をいつ裏切るかもわからないリグレット達という不確定要素を抱え込んでいる私もろとも、一斉に始末にかかりかねないと私は考えました」
「っ・・・成程・・・元々の目的が目的なだけに、大詠師が丞相達を放っておく訳はないという事ですか・・・」
その中で改めてモースに何も言わなかった理由について聞くトリトハイムだが、孔明の返答にまた苦い表情を浮かべる。モースを引き込めたとしても後々、孔明達を始末にかかる可能性が非常に高いと気付いて。










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