軍師、侵略する

「では話を戻しますが、リグレットが謡将の配下として見初められたのはそういった預言に対して思うところ・・・もしくは思う物がなかったからです。現にディストが謡将の配下にと求められた理由は預言に忠実でないことは元より、研究者としての研究成果を求められてですからね」
「そう、なのですか・・・?」
「はい。ですが彼も私の説得によりリグレット同様間蝶としての役割を担っていただいていますので、そちらについては置いておきます。重要なのは他の三人も同様だということです・・・アリエッタに関しては元々導師守護役だったのを解任された後に謡将が引き取った形になるので、除外しますが」
「・・・まぁ、アリエッタは預言を信じているかは確かに微妙ではありますが、あの幼さを考えればどちらかと言えば騙されて謡将の元にいるといった方がしっくり来ますね・・・」
「えぇ。ですが彼女は下手に言葉を用いて説得をしようとしても場面を間違えれば感情的になるのは目に見えていますから、状況が進むまでは放っておくのが吉と言えます。ですのでアリエッタの事は出来る限り後に回しますからこちらは気にされないでください。彼女が癇癪を起こした場合の被害を考えるとあまり過度な干渉は望ましくありません」
「っ・・・そうですね。彼女が共にいる魔物が暴れたならダアトの被害も相当な物になるでしょうから・・・」
そこから今度はディストの身の上を説明して仲間内にいることを話し、アリエッタの事について口にする孔明に詠師陣は動揺した様子を浮かべる。アリエッタが脅威と見られているのは本人の戦闘力もあるが、何よりの特徴として魔物を使役して人に意図的にけしかけられる所・・・そう彼女の事を考えている者達からすれば、かなりの驚異の為に。
「まぁアリエッタについてはこのような所になりますが、残りの三人もまた大方似たような考えを持っていると謡将に見初められました。そしてその六人の実力者が集まり、腕こそ六人には及ばないものの謡将の考えに賛同し動く者達が集まったのが六神将で謡将傘下の神託の盾になります」
「っ・・・神託の盾の人事は、そんなことを易々とやらせてしまっているのですか・・・?」
「基本的に兵士や人員の配置は、その配置する側の上の人間の判断によって行われます。その点で神託の盾のまとめ役である謡将が自身にとって都合のいい人員を選び、配属させることは然程難しい事ではありません。その上で謡将は大詠師の配下という立場にいて下の者では余程でなければ意見を通しにくい所にいます。無理矢理にでも意見を通そうと思ったのでしたら、二年前のカンタビレ殿が様々な事を覚悟でティア=グランツを大詠師の配下にと願ったよう、重い代償を覚悟してもようやく達成するか否か・・・と言ったギリギリが関の山と言った所でしょうね。余程うまくいったと仮定してです」
「カンタビレ・・・懐かしい名前が出てきましたが、思えば彼女が人の来ないような僻地に行く直前にティア=グランツが大詠師の配下となったんでしたね・・・それも彼女の推薦で」
「はい・・・当時どのような経緯でティア=グランツが大詠師の配下になったかは大詠師が不機嫌そうにしていたので知るよしもありませんが、少なくとも円満なやり取りを経てそうなった訳ではないと言うのは分かりました・・・少し話が逸れたように思うかもしれませんが、今のダアトで大して大詠師にとって影響の及ばない配置変えなら大丈夫でしょうが、そうでない人員変更は余程でなければ許されません。表向きは大詠師に付き従う謡将なら預言の為の行動をしてくれるからと、彼くらいが例外を認められるくらいです」
「「「「・・・」」」」
その上で孔明はアリエッタの話題からいかにダアト内で人員の配置が勝手に行われていたかに意見するのが厳しかったのかと話し、詠師陣は唖然としていた。そこまで偏った事をやっていたのかといったように。











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