軍師、侵略する

「この事に関しては人の死まで預言には詠まれているという事実を公然というより、そういうものだと大々的に声に出して説明してこなかったことにも問題があります。確かに死が預言に詠まれているとなれば何故そんなことになるのかと不満に満ちた声も出てくるでしょうが、その隠蔽体質が次第に教団の内部の人間同士にすら預言の中身を秘密にするような事態にまで陥ったのです」
「・・・それは、確かに・・・預言に死が詠まれている事もあることは知ってはいましたが、その事をいつしか我らは忘れていた・・・預言には繁栄しか詠まれていないし、死など詠まれている筈がないと勝手に思い込む事で・・・」
「えぇ。もし本当に預言全てに人の死が詠まれていないとするならば、戦争など起こるどころか些細で個人的な争いやいさかいからですら起きず死者が出ることはないでしょう。その上で人が死ぬ外的な理由は精々が病死に留まり、大半の人々は老衰という天寿を全うした生き方になるはず・・・ですが現実は預言に人の死が詠まれていたならそれを秘匿し、ダアトや神託の盾の人間ですら欺き死地に赴かせるという命を軽んじた道義に反する行動を取っている者が謳歌する状態です。一応私の調べでどの預言士に教団員が人の死の秘匿に加えて謡将達にその情報をもたらしていたのかは把握していますが、もし何も知らないままに時が過ぎていったなら我々の死も隠匿された上で死地に赴かせられた可能性も否定は出来なかったでしょうね」
「「「「っ!?」」」」
いかに理由があるとは言え死の事実を明らかにしてこなかったことがどういった結果を生んできたか、更には事実を知らなかったなら自分達も知らず知らずに利用されていたのではないか・・・それらを強調するよう預言に人々の行動の矛盾点を上げながら話をしていく孔明に、トリトハイム達はたまらず息を呑んで青ざめた。最後の知らず知らずに死なされる可能性に関して、もしそうなったらといやが上にでも想像させられた為に。
「・・・流石に皆様も衝撃が大きかったようですね、この話は」
「・・・はい・・・他の皆もそうでしょうが、我々は預言には繁栄のみが詠まれている物と思ってきた為にこの話はやはり・・・身内にそのようなことをされるのではと思うと、やはり恐ろしく思います・・・今までのままならそれが有り得ると思うと、尚更に・・・」
「はい、今のままならこの状況が変わることはないでしょう。そしてそれらを変えるには大詠師の事を含め、ダアトを改革する以外に手段はありませんが・・・改めて、よろしいのですね?これまでの従来のやり方を変えるにはそれだけの苦労が伴いますが・・・」
「・・・そうせねばならないと、改めて今の話で思いました・・・大詠師や謡将はそのような預言を知り、それをどうするのかと操れる立場にいて行動していたと言い、これからもそれらを放っておけばこれからもそうなると聞いてしまえば我々が動く以外にないと・・・おそらく他の皆もそう思っていることでしょう」
「・・・トリトハイム殿はそうおっしゃっていますが、どうですか?」
‘‘‘‘・・・’’’’
「・・・そうですか、頷いていただいてありがとうございます(これでより詠師の方々の心をこちらに引き寄せる事が出来ましたね・・・ここまで来れば本題に入っても大丈夫でしょう)」
孔明は詠師陣に気を使ったような声を向けつつ再度自分に付く事について問うと、詠師陣が揃って決意を更に固める様子に感謝しつつ内心で順調と考える。この流れは予定していた物だと。












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