軍師、侵略する

「何故そのようなことをと思われる方もおられるかと思いますが、謡将は目的の為に忠実に動く部下という存在を求めていました。その代表格とも呼べる存在が現在の六神将という訳ですが、謡将の不穏な動きを察知した私は彼らに接触して味方になっていただいたのです。謡将が何の狙いがあって行動しているのかと、それを知るために」
「な、何故そんな回りくどい手段を・・・そんなことをせずとも、他の誰かに言えば・・・」
「そうしていたなら大詠師の指示により、今頃私は生きてはいなかったでしょう。私の行動はダアトに対しての反逆行為と大詠師は見ていただろう事は想像が容易についた上、六神将のような人物達を引き入れているのは教団の為に動いていると言えば十分に言い逃れが出来る範囲の行動・・・天秤にかければ私と謡将のどちらを大詠師が取るかは、分かりきった答えでした」
「だ、大詠師がそんなことを・・・」
「えぇ。私が何も言わなかった理由は今言ったよう迂闊に話が出来ないと思った為ですが、話を戻します・・・私はそうして彼らの協力により謡将の情報を得ていたのですが、謡将の目的が大詠師と違うという事を知るのにそう時間はかかりませんでした」
「そ、それで・・・謡将は何を目的としていたのですか・・・?」
孔明はそんな事をしたのかを慎重になった上での事と強調して話し、ヴァンの目的についてトリトハイム達は恐々としながらも聞きたいと先を促す。
「・・・その目的を話す前に現在の六神将である彼らはアリエッタを除き、皆共通した考えを持っています。それが何か分かりますか?」
「えっ・・・それは・・・すみません、正直見当がつきませんが・・・何なのですか?」
「ではお答えしますが、預言を全く重要視していないことです。いえ、むしろ良くない感情を抱いていると言っていいでしょう」
「えっ!?ローレライ教団の人間で、神託の盾に所属しているのに・・・何故、そのような考えを・・・!?」
孔明はそんな詠師陣を前に前置きとして六神将の考え方について聞き、詠師陣が首を傾げる様子に答えを返すと心底から意味がわからないとばかりに惑いの様子に変わる・・・ローレライ教団の神託の盾に所属しているかいないか以前に預言に悪感情を持つ人間などいるはずもないし、いたとして教団に所属するはずがない。そういった気持ちが詠師陣にあるために。
「・・・事前にリグレットには話をしてありますのである程度彼女の事を話させていただきますが、彼女の弟もまた神託の盾に所属していました。ですが彼女の弟の所属していた部隊のほとんどは死の預言が詠まれていた上で、あえてそれを知らされぬまま戦地に送り出されました」
「はっ!?・・・そ、それは流石に嘘でしょう・・・いくら何でも死の預言が詠まれていて、それを知らせぬままに部隊を派遣したなどと・・・いや、それもそうですがもしそれが本当だと言うなら・・・ローレライ教団の中には、死が詠まれてると知ってもそれを内密にしている預言士がいると言うのですか・・・!?」
「残念ですが、事実です・・・リグレットは弟が帰らぬ身となった事実に疑念を抱く内に事実を知って謡将に戦いを挑み、肯定された後に自分に従うかと言ったように問われて彼の配下になると言ったとの事です。自らの目的の為にと」
「ま、まさか・・・」
「そこから少しして私はリグレットと話をして間蝶となることを了承していただいたのですが、彼女が謡将から得た情報の中にそう言った預言士がいることは事実だそうです。ただそれらが明らかにされないのは一般の人が死の預言が詠まれていた際、その預言の中身を知った人の混乱を防ぐためにあえて言わない不文律のような決まりの中に紛れ込んでいることが理由として大きいと思われます」
「・・・それは、確かに・・・混乱を避けるために仕方ない事は私も理解はしていますが、その習慣がまさかそんなことになるとは・・・」
・・・誰もが隠し持つ秘密と、それらの隠蔽。個人の規模なら大したことはないが組織規模で、それも大きな組織になればなるほど規模もでかくなり隠蔽も必然的に行われてくる。
リグレットの事を例に上げて話を進め教団の秘密についてを語る孔明に、嘘ではないのかとトリトハイムは愕然とする。少なからず自身も把握していた事が上げられた上で、嘘と言い切れない可能性だったが為に。












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