軍師、侵略する

「・・・ではトリトハイム殿にそう言っていただけたのでしたら、他の詠師の皆様にも話に参りましょう。本来なら私一人で各々方を回らせていただこうと思ったのですが、トリトハイム殿にもいていただいた方が説明は早くなるでしょうからね」
「はい、それはいいのですが・・・他の皆は素直に応じてくれるのでしょうか?」
「その点は皆さんもトリトハイム殿と同じような返答が返ってくると私は思っていますが、そうなるように尽力するのがまず第一です」
「・・・そうですね、ではすぐに向かいましょう・・・!」
「えぇ(他の詠師の方々もトリトハイム殿同様、モースへの不信の仕込みは済んでいますからね・・・トリトハイム殿に付いていていただけるなら、さして苦労もせずに終わります)」
それで顔を上げて話を進めるとトリトハイムが意気揚々としている様子に、孔明は頷きつつも考える。もう策の下準備は済んでいると言うか、心証操作は出来ているから楽な物だと。


















・・・それから孔明達は詠師達の元を訪れ話を進めていったのだが、孔明の思惑通り詠師達はトリトハイムと同じような形で最初こそ信じられないといった様子でいた物の次第に話を聞いていき、終いにはトリトハイム同様孔明の側に着くことを選択した。

そして詠師全員の説得が済んだ後、孔明は改めて自身の執務室へと詠師陣を招き入れた。



「・・・さて、皆様・・・改めて私の話を聞いていただいた上で協力していただく事に感謝します」
「いえ・・・ですが我々全員を集めてどうしたのですか?もう話をする必要はないかと思うのですが・・・」
「いえ、こうして皆様方の協力が得られたからこそお話せねばならないことがあります。それは大詠師の命を受けて動く謡将についてです」
「謡将ですか・・・?」
自身の机の前に立つ詠師陣を前に礼を言う孔明にトリトハイムから話はもう済んだのではといった声が上がるが、ヴァンの事があると返して詠師陣に首を傾げさせる。今まで出てこなかった名前に。
「今申し上げましたが、大詠師はあくまで指示を出す立場であり預言を実行する立場にはいません。そんな大詠師よりの指示を受けて動き、預言通りにするために動こうとしているのが謡将になります」
「え・・・で、では謡将はバチカルにいるとありましたが・・・もしや謡将は大詠師の命を受け、アクゼリュスを消滅させるために今動いているという事ですか・・・!?」
「はい、そうなります」
「っ!・・・と、と言うことは・・・謡将もまた、預言を知った上であえてそれを実現しようとしているのですか・・・!?」
「そうですが、それはあくまで表向き・・・いえ、この場合は大詠師に対して見せている偽りの姿と言った方がいいでしょうね」
「えっ・・・どういうことなのでしょうか、それは・・・?」
孔明は詠師陣へモースの考えるヴァンの役目についてを説明した後に実像は違うと言い、詠師陣は目まぐるしく変わる話の流れにただ先を促すだけしか出来ない。
「・・・先にも説明しましたが、私はダアトにローレライ教団の事についてを詳しく調べていきました。その中で謡将の事を知り、彼の配下である現在の六神将が謡将の忠実な部下・・・命令を受けて動く立場にいると知りました」
「何と・・・六神将までも・・・」
「ただその六神将ですが・・・全員が全員とは言いませんが、私が秘密裏に接触して私の協力者となっていただきました。間蝶、いわゆるスパイと呼ばれるような立場の形でです」
「「「「!?」」」」
そこから六神将の事について話題を広げる孔明だが、あっさりと告げた事実に詠師陣全員が驚愕した。六神将全員ではなくとも、孔明のスパイになっていたという事実に。











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