軍師、侵略する

「・・・さて、再度申し上げさせていただきますが少しの間お考えください。時間はあまりありませんが、それでも少しだけでも考えることは大事です」
「・・・分かりました。では考えさせていただきます・・・」
それで孔明は改めて考えることを勧めれば、トリトハイムは頷き目を閉じ真剣に考え込むように沈黙する。そんな姿に孔明は満足そうに微笑み、机の方に向かう。









・・・それから30分もした頃だろうか。机で書類を整理していた孔明はトリトハイムが目を開けたことに気付く。
「・・・考えはまとまりましたか、トリトハイム殿?」
「・・・はい、一応は決まりました」
「ではお聞かせください、トリトハイム殿がどのような結論を出したのかを」
「・・・私は、丞相に味方をしたいと思います」
「・・・よろしいのですね?」
机から離れ孔明はトリトハイムに意志を確かめると、力を感じられる確かな返事は返ってきた物の再度確認を取る。
「はい・・・どちらがダアトの為になるかであったりを考えてみたのですが、それでは結論が出ませんでした・・・丞相だけからの話ではなく大詠師からも話を聞きたかったのですが、今の状況では無理な上に話が本当であれば、それを聞こうとするだけで私の身が危ないと言うことですからね・・・」
「それは仕方ありません。私の立場から言うのはあまりよろしくないと承知で言わせていただきますが、大詠師はまず真実を話すようにとまともに取り合おうとしないだけならまだしも、口封じにかかる可能性が高いですし・・・何より時間が足りませんからね。事実を聞いて対応をするには」
「はい・・・ですので今の状況を考えて、大詠師を無闇に信じるよりは丞相について真実を見極めるのがよろしいのではないかと思ったのです。少なくとも、丞相の言葉からは我々を蔑ろにして軽く見るような事はない・・・そう私は、感じました。だから私は丞相につきます。これからのダアトに預言・・・それらについて考えていく為にも」
「・・・そう決意していただき、ありがとうございます(計算通りですね、モースの性格にトリトハイム殿の人柄を考えればこういった風に言えば乗ってくれると思っていました)」
そこから自身がモースと孔明について感じていることの違いについてを述べた上で味方につくと言ったトリトハイムに、孔明は真剣に頭を下げる・・・内心ではいつも通りの口調で計算通りと言っているが。



・・・多少前とは変わってはいるとは言え、基本的に孔明は勝算の薄い戦いというものを避ける。感情論だけで策もなく特攻して一か八かの勝負など、有り得ないと言うレベルでだ。

そんな孔明からすれば今回のトリトハイムの説得などむしろ簡単な物と言えた、トリトハイムの性格もそうだが、モースのやり方が強引であることは既に上層部では周知の事実であるために。

・・・ただ、本来モースが一般に思われている教団の信者達に慕われるような性格であったりやり方を選んでいたなら、孔明もまたもう少し慎重なやり方を取っていただろう。もしモースがそんな人物であったとしたならトリトハイムも今の話だけではなびかないだろうどころか、むしろ孔明を反逆者として捕らえようとする可能性が高かったのだから。



(近い立場にいればいるほど粗が見える・・・そんなことも分からないから人を見る目もなく、獅子身中の虫を飼うのですよ。モース・・・)
・・・そんな孔明にしては手の込んでない策を用いたのは、全てモースのあまりの詰めの無さにある。
孔明はそっと口元を上げていた、こうも容易くトリトハイムの心をこうやって引き寄せれた事にモースへの嘲りを多大に含ませ。











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