軍師、侵略する

「・・・というわけで、今の導師には大詠師から預言の中身については知らされていないと見るのが妥当です。そうでなければ預言保守派と預言改革派と大詠師に導師の構図になることに加え、事実を知るからこそ導師が何の対策であったり行動も取らずに軟禁されるだけというのはおかしいとしか言えませんからね」
「・・・言われてみれば、そうですね・・・前半だけなら事実を知るからこその行動と取れますが、大きな動きもなく軟禁されていた事を考えれば事実を知らない可能性は高いということですか・・・」
「加えて言うならマルクトの方々に連れられていった際に預言の事実を話すとしたなら、唯一無二の絶好の機会を作り出せる好機と言えます。もし導師が全てを知っていて、マルクトに連れ出されたと知っていたなら大詠師は戦々恐々としていたでしょうね・・・預言の事実をマルクトに知られた上でどう対策を取られるのか、と」
「それも導師が何も知らないが故に・・・ん?少しお待ちを、丞相・・・」
「何でしょうか、トリトハイム殿?」
孔明は話を続けていきイオンが預言の中身を知らない根拠についてを語りトリトハイムは納得していく中、ふと疑問を思いついたといった様子で手を上げる。
「丞相は先程言ったよう、ダアトの内部事情についてを調べあげていったのですよね?預言の中身であったり、全てを含めて」
「はい、そうですが」
「では・・・何故、導師にそれらをお伝えしていないのでしょうか?そこまでお調べだと言うなら、導師に全てをお話しするのが手っ取り早いと思うのですが・・・」
それでトリトハイムが出した疑問は何故その事をイオンに教えていないのかと、心底からどういうことだと視線と共に向ける。黙っている理由はない筈だと。



「導師には全てお話していますよ。その上であえて何も知らないと言ったように振る舞っていただいているだけです」



「・・・え?」
・・・だが微笑を浮かべられながら返された言葉に、トリトハイムはその意味を理解しきれず静止してしまった。イオンは孔明より全て知らされた上で行動している、という事実を。
「トリトハイム殿の気持ちは分かります。ですが導師が事実を知った上で動いているけれど、そう気付かれた時の危険性が高い為にあえて何も知らないフリを導師にはしていただいているのです」
「と、ということは・・・あえてマルクトには何も知らせずに事を進めている、と言うことですか・・・?」
「少なくとも現時点でマルクトの方には事実については知られてはいないでしょう。ただもう少ししたならこちらから事実についてを明かすようにはしてはいますが、先にマルクトに事実を伝えなかった理由があるからこそ預言の事を言わなかったのです」
「えっ・・・その理由とは・・・?」
「大小様々にありますが、私が最も懸念したのは事実を知らせたとしてもマルクトがそれを信じないかもしくは過剰な反応を取る可能性についてです・・・話を聞いてトリトハイム殿が信じられないといった様子を見せたようマルクトが話を信じない事も有り得ると、私は感じていました。もしそうなったなら話をしても意味がないどころか、事態が収束してもマルクトが後々に逆恨みといった形で報復に来ることも有り得ないとは言えません」
「そ、それでは過剰な反応とは・・・?」
「最も危険な可能性を上げるなら預言通りの戦争にならない、させないようにと預言の中身を明かした上でキムラスカ及びダアトに戦争を先に仕掛けることです。そうなってしまえばいかに我々が止めようとした所でマルクトが止まることはないのは明白です」
「っ・・・確かにそうなればマルクトは言葉ではなく、戦争を終えるまで止まらないでしょうね・・・」
それでイオンの事からマルクトに何故預言の事を言わなかったのかという話に進み、孔明の答えにたまらずトリトハイムは冷や汗を浮かべる。もし選択を間違えていたなら自分達も死んでいたのかもしれないその危険性について聞かされ。









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