軍師、侵略する

・・・そう、問題なのは神託の盾と言うか命令を出した教団の人間がハッキリとした理由についてを釈明しなかったことにある。

表向きは必要な事だとか戦争を仲裁したかったといったように当時の教団は宣ってはいるが、老マクガヴァンの怒り方を考えれば神託の盾の行動は百歩譲って必要な事というのはともかく、仲裁の為の動きとは到底言えないような動きであった。

しかしそれをマルクト側が抗議しようにもホドの消滅という大事態によりうやむやになり、証拠となったであろうことに関してもホド自体が無くなったことにより抗議したとしても証拠不十分で訴えるだけ馬鹿を見る・・・となるのは明白な事であった。

・・・ただそれはあくまでもマルクトの立場から見た物の話であって、ダアトの人間から見た立場の物ではない。そしてその理由に関して大多数の者がトリトハイムと同じよう、何も知らされていないと言うのが実状なのである。真実を是非とも知りたいと思うような人間ばかりではないとしてもだ。



「ですので、私としましては此度の大詠師の行動に関してはまだ行動に移してはいないとは言っても・・・かつてのホドのよう、戦争を幇助するような動きではないかと思ってしまうのです・・・それも丞相の話によるなら今度は明確にキムラスカに大義があると、そう仕向けるような形の動きと・・・」
トリトハイムは続けてモースについて自分がいかに不信感を持っているのかと、目の前にいるのが孔明という忠実なモースの部下と見られている人物でもあるのに関わらず苦い胸中を語る。
「・・・事実、その通りです」
「・・・・・・え?」
そんな姿に孔明がまさかの肯定を返したことに、トリトハイムは大きく間を空けてキョトンとした声を上げる。そんな答えが返ってくると思わなかったとばかりに。
「その通りだとおっしゃったのです。大詠師はキムラスカに味方をして、戦争を幇助しようとしていることには間違いありません」
「なっ、何故そのようなことを丞相が言えるのですか!?それにもしそうだとして、大詠師がそこまでする理由は何だというのですか・・・!?」
「・・・その話についてですが、ここから話すことはダアトの影の部分です。知れば後悔することになるかもしれませんが、それでも詠師は事実をお聞きしますか?」
「・・・そこまで、のことだと言うのですか・・・!?」
「えぇ、そこまでのことだと肯定させていただきます。そして冗談でも過言でもないとも」
「・・・っ!」
孔明はそんなトリトハイムを現実に引き戻すように話を進めていき、いかに今から話す中身が真実であると共に重い中身であるのかと羽扇で口元を隠しながら告げて息を呑ませる。
「・・・それで、お聞きしますか?詠師」
「・・・聞くのが怖い、そういった気持ちがないということはありません。ですがここまで聞いてしまった以上、引き返すという選択肢はありません・・・お聞かせください、丞相・・・真実について・・・!」
「・・・分かりました、お話します(トリトハイム殿なら乗ってくるとは思っていました、計算通りですね)」
そして最後通告をするようどう選択するかと聞くと覚悟したとばかりに意を決した表情を見せるトリトハイムに、孔明は真剣に頷きつつも内心で考える。自身の予想通りの展開だと。









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