軍師、侵略する

「ですが何故、大詠師がそのようなことを・・・導師を軟禁はその、マルクトが導師を連れていく前にそうした前歴があるのでまだ分かりますが・・・そのような形で戦争を是が非でも起こそうとは・・・」
「・・・詠師、一つお聞きします。貴方は戦争については肯定派ですか?否定派ですか?」
「・・・それは、今お答えしなければならないことですか・・・?」
「えぇ、むしろ今でなければなりません」
「っ・・・!?」
更にモースに対して嘆くように声を漏らすトリトハイムに静かに孔明は問いを向け、答えたくないといったように返す様子に先とは違い静かだが確かな力がこもった声を向けると、迫力に負けたとばかりに息を呑む。
「・・・それで、どうなのですか?」
「・・・個人的な考えで言うなら、私は戦争に賛成ではありません・・・と言うよりはここだけの話ですが、先に丞相が話に出したホド・・・ホドに神託の盾を派遣した意味というものが未だに私は理解出来ません・・・話に聞く限りでは当時キムラスカとマルクトの戦いは均衡を保っていて、神託の盾が介入しなければホドも消滅することなく鎮静化する可能性もあったということなのに・・・」
「・・・成程」
孔明は間を置かずどうかと問うと、トリトハイムは重く戦争を肯定しないと共にホドについて何故という気持ちを未だ抱いていると返した為に一つ頷く。



・・・流石の孔明でも自分の知らない場所で話された事については知るよしもないが、当時のマルクトの軍の元帥であった老マクガヴァンもルーク達に会った時にホドでの神託の盾の事を引き合いに出した時は怒りを見せていた。神託の盾が介入したから、状況が混迷化したのだと。そしてその混迷の結果、ホドという大地が消滅して大多数の行方不明を含む犠牲が発生し、キムラスカもマルクトも何も得られないどころか多大な損失を生んだ戦いとなったのがホドでの戦いだ。

そんな被害を生んだ大きな原因は、トリトハイムが言ったように神託の盾がホドの戦いに介入したことに他ならない。当時の戦況はキムラスカにマルクト両国共に停滞気味で時間が経てば和平とは行かずとも、停戦にまでいく可能性も少なからず出てきた時だ・・・なのにそこに神託の盾は入ってきた。両軍を触発して戦争に介入する形でだ。

そのせいで戦争は止まるどころかむしろ泥々の戦況となってホドが消滅したことを筆頭に、キムラスカにマルクトも犠牲者が多数出たのだが・・・神託の盾にも少なくない被害が出たのが、ダアトの問題点の中で看過出来ない事の一つでもあった。戦争に介入しておいて明らかに見て分かるような戦果を何一つあげることなく、ただ被害ばかりを大きくしたという端から見れば愚かな結果の一つと。

・・・色々と取り上げて掘り下げていくとキリがないが、大多数の人々から客観的に見たなら神託の盾の行動はおかしいと言わざるを得ないのだ。しかしそのことを公にされることはないのだが、その理由については明らかになっている。ただそれを公に口にするものはいないというか出来ないのだが、今はそこは問題ではない・・・



「・・・私は今でこそ詠師という立場にいますが、当時の詠師や大詠師などに話を聞いた時には必要な事だとしか言われませんでした・・・ですがどう考えてみても私にはキムラスカやマルクトや神託の盾の犠牲にホドの消滅と、全くダアトにとって利のない物にしか思えませんでした・・・正直、私には前任の大詠師もですが今の大詠師の考えも全く理解出来ません・・・」
「ふむ・・・」
続けてトリトハイムは自身の考えに感じたことを心底からさらけ出すように話し、孔明はその様子に話をしっかり受け止めていると声を上げる。











3/20ページ
スキ