軍師、侵略する

・・・時間は戻り、孔明がダアトに戻ってきた時にまで遡る・・・









「・・・丞相、お疲れ様です」
「これはトリトハイム詠師・・・わざわざ私をお迎えに来ていただいたのですか?」
「えぇ、丞相が戻られると聞きましたのでお待ちしていました」
教会の前にまで来た孔明が目にしたのは扉の横でトリトハイムが待ち構えている光景。孔明はトリトハイムに話し掛けられ、堂々と待っていたと返される。
「・・・積もる話もあるでしょう。まずは私の執務室までいらしてください。帰ったばかりですのでロクにもてなしも出来ませんが、よろしいですか?」
「えぇ、分かりました」
そんなトリトハイムに執務室に来るように孔明が誘うと、すぐに頷く。



「・・・さて、戻ってきたばかりですがわざわざ私を待っていたのです。何か私に用なのでしょう?」
「えぇ、丞相からの手紙を受けていてもたってもいられず・・・」
「あぁ、バチカルでの経緯を記した手紙ですか」
それで執務室に来た孔明は待っていた理由を早速と聞き、トリトハイムが何とも言えず苦い様子を浮かべ手紙と言ったことに納得する。
「・・・色々お聞きしたいのですが、まずは大詠師がインゴベルト陛下にマルクトが戦争の準備をしているといった事を言っていたと言うのは本当なのでしょうか?」
「えぇ、それは間違いではありません。そして導師にカーティス大佐達の言葉によりすぐに苛立たしげにその場を離れました。十中八九どころか、間違いなく大詠師はキムラスカとマルクトを戦争させるため・・・それもマルクトに原因があるといったようにするためのものだと思われます」
「っ、やはり・・・ですが何故そのようなダアトが戦争を助長するような行動を・・・」
「様々な理由はあるでしょうが、大きな理由の一つとしてはいざという時に話に聞くホドのよう神託の盾を派兵する大義名分を作るためでしょう。それも戦争を止めるためと言った目的ではなく、マルクトが戦争の準備をしていてきっかけもマルクトが引き起こした・・・だからキムラスカに味方をする事が大義であると言ったようにする形でです」
「なっ・・・導師が和平の仲介をしていると言うのに、そのようなことを・・・!?」
「そこはマルクトが正規の手段を取らず、強引に導師の身を拐うように連れていった事はキムラスカを自らの手の内に引き入れる為に騙すための手段だ・・・とでも言って大詠師は押し通すつもりでしょう。導師はマルクトより連れ出される前のよう、いえそれ以上の軟禁を持って発言さえさせぬ形を取ってです」
「っ!・・・大詠師はそのようなことはしない、とは言えないのが辛いところですね・・・今までの大詠師の行動を振り返ると、決して大袈裟ではないと言うしかないために・・・」
それでトリトハイムが意を決して触れたのはマルクトが戦争を望んでるかのように仕向けているモースの行動で、その意図及び狙いについてを一例を上げて事細かに可能性を述べていく孔明に複雑としか言い切れない表情で顔を歪める。



・・・戦いというものは力が互角であるなら、攻めるよりも守る方が有利という見方が強い。何故かと言えば守る方は守りきれば勝ちで攻める方は攻めた上で守りを崩すという、守りよりも一段階上の作業をこなさないとならないからだ。そして守る側からするなら、守りきりさえすれば勝ちという攻め側にはない単純な構図になる上に元々戦は守る側が有利とされているのだ。

故に力が互角なら守る立場となるだろうマルクトが有利だろうが、それはあくまで互角ならではの話だ・・・ここにダアトが入り、更にはキムラスカ側に完全に味方をするとなれば話は別だ。

もしダアトがキムラスカに味方をするとなれば兵力の不利が生じることもあるが、それ以上に手段を問わずダアトが行動をした場合が何より拙い・・・例を二三個上げるならキムラスカに大義ありと言うだけならまだいいが、ダアトがマルクトの人間に対して預言を詠まないと言った制裁行動を取るか、最悪詠まれた預言にマルクトが負ける・・・と言った中身をぶちまけたなら、どう少なく見積もっても一気にマルクト側の士気はガタ落ちになるのは避けられないだろう。

そうなれば後はマルクトが負ける未来を避けることは叶わないのは目に見えている・・・その後の展開などキムラスカやモースは全く考えない形でだ。










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