女忍、躍動する

「ちなみにくのいちさん、僕達の考えについては異論はありますか?」
「ん~ん、ないよ。多分旦那様もこの場にいたらそれが正解だって言ってくれると思うし、それ以上にやっぱりティアを野放しに出来ないからね。これから旦那様の策を進める上でティアが協力するってなって途中で戸惑ってそれがパァ、なんて展開になるのも避けたいし」
「そうですか・・・ではリグレット、もうティアを捕らえてタルタロスの牢に入れてもらっていいですか?」
「はい、そうさせていただきます」
「っ!?ま、待ってください教官!」
「ふぅ・・・何だ?」
イオンはそこからくのいちに確認を取った上でリグレットにティアを牢に入れるよう言うと、すぐさま焦ったようにティアは声を荒げてリグレットはタメ息を吐きながら用向きを問う。
「わ、私の事が信用出来ないと言うのは分かりますし兄さんやモース様の事を割り切れていないというのはこの際もう分かりました・・・で、ですが私はイオン様や教官に丞相には迷惑をかけません!ですから牢に入れるのだけはやめてください、お願いします!」
「駄目だ」
「なっ・・・!?」
「さっき言ったことをもう忘れたか?私はあくまで丞相の味方という立場で謡将の元に潜んでいたという理由があるが、お前は謡将の事を私心で黙っていた前歴がある・・・事情を知る私がお前に何も言わなかった事に関して多少の責はあるとは自覚はしているが、だからと言って情けをかけてその事実を看過するほど甘くはない・・・本来なら即刻ダアトに身柄を送って釈明の余地なしで有罪になってもおかしくないのだぞ、お前は」
「そっ、そこまでなんて・・・」
「っ・・・街や国家の存亡に関わる事をそこまで大した事じゃない、なんて言える権利がお前にあるのか・・・一体お前は私から何を学んだ、ティア!?」
「っ!?」
それでも尚自分をそのような扱いにはしないでほしいとティアがあがく様に静かに説明をするリグレットだが、そこまでと尚言ったことにギリッと歯を噛んだ後に声を荒げた。生徒の出来のあまりの悪さに心からの憤慨を抱かずにはいられないとばかりに。
「・・・お前が私の指導を初めて受けてからしばらく、お前は私の言うことなど聞きたくない、謡将に教えをもらいたいと駄々をこねていたが次第にその態度を軟化させて素直になっていった・・・これは私としても少なからず嬉しい事だった。しかし兄である謡将を刺しておきながら苛烈な処分を受けなかったことも相まって、今となっては思う・・・お前は私の教えを受けて成長したのではなく、単に私に気を許しただけで他者や物事に対しての認識の間口の狭さは全く変わってないだけだとな」
「そっ、その言い方は流石に教官でも酷いです!」
「言い方が悪いというが、そこまで自分に責任はないといったようにお前は言った・・・規模の大きさを考えて、その程度と言った度合いですむような出来事とは言えん!なのに何故お前はそれを分からんのだ、ティア!」
「っ!」
リグレットはそれでも諭すようにと話を進めるのだが未だ自分を見損なわないでほしいと諦めが悪い上に論点のずれた返しをするティアに、再度叱咤の怒声をぶつける。
「・・・ってい♪」
‘ゴスッ!’
「あっ・・・!?」
「奥方・・・?」
ビクリと身を縮めたティア・・・そんな後頭部に後ろに一瞬で距離を詰めたくのいちが肘打ちを落とし、リグレットはどういうことかと目を丸くする。












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