女忍、躍動する

「タルタロス・・・!」
「あぁ、心配しなくていいよ~。この中には謡将一派の兵はいないし、ホラ・・・」
「イオン様・・・!?」
タルタロスを前にしてガイが緊迫した空気を滲ませるが、くのいちが大丈夫と言った上で先を見るように視線を向けると数人の兵と共にこちらにイオンが歩いてきて、ティアが驚愕を隠せずに目を見開く。
「・・・無事成功したんですね、くのいちさん」
「バッチリ、成功させちゃったぜい!・・・まぁそれはいいんですが、こっちに色々説明しなきゃならないんで証言役として付き合ってもらいたいんすけど」
「元々そうするつもりだったので、構いませんよ」
「イ、イオン様・・・これは一体、何がどうなっているんですか・・・!?」
イオンは一同の前につき労いの笑顔を見せてくのいちがさっと説明の方に流れを行かせると言うと快く了承するが、ティアは混乱が更に深まった様子でどういう事かと問い質してくる。
「んじゃ色々聞きたいことはあるだろうけど、細かく説明していく前にまず核心について話すと・・・ティアなら知ってるでしょ?一般的にダアトが導師を筆頭とする預言改革派に大詠師を筆頭とする預言保守派があって、その上で・・・謡将がどっちにも当てはまらない派閥を作っていて、秘密裏に活動してる事を」
「!?・・・そ、それは・・・」
「・・・その反応・・・どうやら当たらずとも遠からず、といった所ですか」
「た、大佐・・・そ、それは・・・」
「否定したいとか色々言い分はあるだろうけどそれを踏まえて先に話を進めると、実はもうひとつダアトの内部には派閥があるんだよね~。そしてそれが旦那様を筆頭とした全く別の派閥ってヤツで、私やリグレット達はその派閥の一員っていった所だよ。私達の事を分かりやすく言えばね」
「!?コ、コーメイ様がそんなことを!?」
そんな様子にくのいちはヴァンの事を話題に出しつつ自分達が孔明の一派であると明かし、ジェイドに鋭い目を向けられつつもティアは新たな驚愕を覚える。
「・・・じゃあまさか、リグレットにディスト・・・テメェらはハナからコーメイの所の奴らだったってのか・・・!?」
「最初から、と言うのは語弊があります。我々はしばらくは謡将の一派の一員として活動していましたが、謡将に付き従う理由がないと教えていただいた事により丞相に付いたんです。時が来るまで、謡将を裏切っていないと思わせる形でね」
「・・・じゃあ今がその時だってのか・・・!?」
「その通りだが、何故お前はそうも私達に敵意を向ける?もう私達は謡将の配下という立場を脱し、同じように謡将の配下という立場を捨てたお前とは敵対するような理由はないはずだが・・・それとも、自分にとって都合の悪いことにさえならないでおけば謡将の味方だということから、お前は私達に敵意を向けているのか?」
「っ・・・!」
次にアッシュがリグレットとディストの二人に裏切ったのかとばかりに声を向けるが、逆に何故それを批難するのだとばかりに返され悔しげに口元を歪ませる。下手に文句を返せないとばかりに。
「・・・では次に私から聞きたいのですが、改めて確認します。貴殿方は丞相も含め、マルクト側に寄った立場にいるというのは本当ですか?」
「うん、それについては間違いないよ。と言うよりは大佐も分かってるでしょ?・・・今更キムラスカに大詠師、そして謡将達を信じるより私達の方がまだ信じれるって」
「その事に関しては疑ってはいませんが、どのような狙いがあるのかそれを聞かせてはいただけませんか?確かに貴殿方は彼らとは違うとは思いますが、かといって今の状態で全て信じろというのもいささか無理があります」
「いいよ~、どうせ話すつもりだったしね~」
それでジェイドが次にと説明を深くするよう願う様子にあっさりとくのいちは頷く。秘密にすることではないためにと。











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