軍師、子どもをもらう

「・・・貴女の言ったよう、疑う事を教えられなかった二人はお金を貸す者の事を無条件に信じています。そしてその者がお金を貸すと言ったなら二人は微塵も疑うことなく借金をし、モースに対して更に大きな借りを作ることになり貴女は一層スパイという立場から逃げられなくなる事でしょう・・・蟻地獄とは正にこの事です。もがいてももがいても抜け出せなくなるその様は」
「っ!・・・っ、でも丞相は私を守るって言った・・・つまり、それって・・・!」
「はい・・・貴女を守ると言ったのはその立場からという意味ですよ。ただ・・・貴女の両親は同じようには出来ないと言うことは分かってください」
「えっ・・・!?」
それで両親とモースの行動がいかにアニスにとって過酷な環境を作るのか・・・その言葉にアニスは冷や汗を浮かべかけた後に希望を見出だしたかのよう孔明の言葉を思い出し言葉にするが、肯定しつつも両親は無理と返され心底からの驚きで何故と言わんばかりの声を上げる。
「その理由についてはいくつかありますが・・・最も大きな理由としては、二人が本当の意味で自制を覚えてくれなければ根本的な問題の解決にならないどころか、彼らの更なる増長とも呼べる勘違いを招きかねないからです」
「勘違いって・・・」
「これから私はモースの事を含め色々と動くつもりでいます。その中でモースに借金の事を解決したとして、後に借金をしないように言っても借金をすることは明白です。色々言われはしたけれど丞相が借金をないことにしてくれたけれど、それなら今度はちゃんと自分達で考えた上で誰かの為に借金をして自分達で返そう・・・最終的にそういった結論を出す形でです」
「・・・それは・・・」
「そのようなことを考えられた上でまた似たような事をされてしまえば、次は流石にもう貴女を含めた彼らを助ける事は出来ません・・・今はまだ貴女がスパイに仕立てあげられるという人道に基づかない行動から助ける為という大義が成り立ちますが、その時点ではもう貴女方は何のしがらみもない状態です。私が貴女方を助ける理由は存在しませんし、何より同じことを繰り返されてしまえば助けても意味がありません。ハッキリ言わせていただくならむしろ無駄ですし、甘えを生みます。何をしても私が助けるという甘えを」
「っ・・・無駄に甘え、か・・・否定したいけど、多分私もそうなると思います・・・特にパパとママの二人は丞相が自分達の事を認めてくれたんだって、そう考えて一層人の為にしようって考えて動いて・・・それでまた、人に騙されたってなっても笑顔を浮かべる姿が目に浮かびます・・・」
その理由についてを二人が借金についての改心をしないことと救いようの無さを強調をするように孔明は言い、アニスもかなり苦々しそうながらもその考えは有り得ることと認める。子供の立場から両親を見てきたからこそ、都合のいい解釈をするだろうと予測し。
「・・・本来であれば、貴女の両親も助けるべきであろうとは私も思っていました。ですが自分が不幸だと思っていない人物を助けることは私にもですが、誰にも出来ないのですよ」
「・・・不幸だと、思っていない?」
「世の中には大して不幸でなくとも不幸だと漏らし救いの手を求める人も少なくはいません。そういう人物に対してなら手を差し出せば掴んでくれる可能性は十分に有り得ますが、幸福だと思っている人物は助けとして出した手を助けと思い掴み取ることはありません。むしろ自分を否定される、もしくは不幸に陥れるような行動と思い拒否をするでしょう。まぁあの二人の事ですからそのように相手を否定するような考えを抱くことはないでしょうが、考えを変えるようにと言ったところで自分達が幸せであるという認識が変わらない以上は何をしても意味がありません・・・預言に従い、誰かの為にいい人物か悪い人物かなど気にせず役に立てる事。それが自分達の幸せなのだという考えが変わらない以上は」
「っ!・・・そんなのが、幸せなんて・・・おかしいよ・・・パパ、ママ・・・」
そこから孔明が両親が思う幸福についてを話すと、アニスは泣きそうな声でたまらずうつむいてしまう。その考え方は思考放棄の自己犠牲・・・両親を評した言葉があまりにも普通の人間らしくない物であった為に。









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