女忍、躍動する

「・・・うん。とりあえずアニス、ルークの事をトクナガで運んであげて。動揺もしてるだろうし、落ち着いてもらった方がいいだろうしね」
「はい、わかりました」
「・・・うおっ!?・・・い、いい・・・一人で歩ける・・・」
「無理はしないでください、ルーク様。今は一人で歩くのも辛いでしょうし、トクナガの背でゆっくり気持ちを落ち着かせるんです・・・今さっき起きたことが何なのか、自分の中で噛み締めるためにも」
「っ!・・・分かっ、た・・・」
そのままくのいちはアニスにトクナガを使うように指示をすると地面に足をつけたトクナガは一瞬で大きくなってすぐにルークを背にかつぎ、ルークは憔悴していながらも焦った声を上げるが真剣にまっすぐ見つめながら返された言葉にすぐにシュンと頷く・・・流石にヴァンに裏切られた事実が大きいことと、それを嫌でも噛み締め飲み込まなければならないと少なからず感じたが為に。
「んじゃ出ますか♪」
そしてもう反対はないと見たくのいちの楽し気な声と足取りに続き、ジェイド達も続く。ほとんどのメンバーが不安だとかマイナス面を滲ませる暗さを感じさせるような形で・・・






「・・・さて、出てきた事だし・・・もう出てきてもいいよディスト~!」
「何っ・・・ディストだと・・・!?」
「・・・お待ちしていました。成功したようですね、その様子は」
「うん、まぁね~」
・・・それで第14坑道から出て大声で辺りに呼びかけるくのいちにアッシュが反応するが、近くの坑道から兵を引き連れ出てきたディストにくのいちは気にせず会話をする。
「おい、勝手に話を進めるんじゃねぇ!・・・まさかディスト、テメェもリグレットと同じようにヴァンの野郎を裏切ってやがったってのか・・・?」
「えぇ、その通りです。ですがそれが貴方にとって何か困った事に繋がるのですか?謡将の手の元から離れると選択した貴方にとって、私やリグレットが裏切ると困るような何かに」
「っ・・・なんだテメェ、その言い方は・・・!」
それでも無視される事に我慢ならず無理矢理ディストに裏切りについて聞くアッシュだが、神託の盾内で見せていた馬鹿っぽく自信しかない姿から一変して冷静でいて冷やかなその態度からの返答も相まって、気に入らないと一気に殺気立たせてディストを睨み付ける。
「はいは~い、その辺りも含めて色々説明するから殺気を抑えてねアッシュ~。じゃないとちょっとこっちも強行手段に出なきゃならないから、ね?」
「っ・・・チッ・・・」
くのいちはその間に入りアッシュを舌打ち混じりで納得いってない様子ながらも退かせた・・・と言うよりは明らかにくのいちの笑顔の下に込められた圧力に負け、精一杯の強がりを見せて逃げたと言った方が正しい。
「・・・ディスト、一体どういうことなのでしょうか?」
「貴方の言いたいことは分かりますよ、ジェイド。ですが私の事から先に話すと全体像がボヤけてしまいますので、後で話しますから今は黙っていてください。お願いします」
「・・・分かりました」
今度はジェイドがディストに訳を問うが、ピシャリと後にするように言い切られて困惑を隠そうとしながらも頷くしか出来ない。関係があるにも関わらず、深く追求出来ずに。
「よ~し、話もすんだ所でタルタロスの方に案内よろしくね二人とも」
そんな空気をもろともせずにくのいちは案内を願い、二人は先頭を歩く形で先に進む。









・・・それでくのいち達が連れられてきたのは、タルタロスの前であった。









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