女忍、躍動する

「・・・役目を果たすどころか役にも立たん道具にもう用は無い。死ね!」
ヴァンは握りしめた剣を振り抜き、ルークの首元を狙う。けして今のルークには反応しきれない速度で。
‘バタンッ’
「うわっ!」
「・・・何・・・!?」
しかし確かに首元を狙った剣は外れ、ヴァンは地面に倒れこんだ・・・いや、後ろに倒れこまされたルークと胴体を抱いて倒れこませたもう一人を見て動揺の声を露にする。



「ふぃ~っ、危なかったぁ~。もう少し遅れてたら手遅れになるところだったよ」
「く、くのいち・・・!?」



・・・その倒れこませた人物はくのいち。
笑顔を見せて立ち上がるその人物にどういうことかとルークは表情と声に動揺を表す。
「ごめんね~、色々と説明したいのは山々だけど今はこの修羅場をどうにか切り抜けないとまずいから後でね」
「・・・その構えは・・・もしや私と戦おうというのですか、奥方?」
そんなルークに後でと優しく言いつつクナイを両手に持ち戦闘体制に入るくのいちに、落ち着きを取り戻しつつも若干嘲るようなニュアンスでヴァンは返す。もう本音を隠す気もない事以上に、女一人に負ける事などないとばかりに。
「お望みなら今この場で倒して差し上げてもいいと言いたい所ですけど、そんな時間はもうないのでゴメンね♪」
「何を訳の分からんことを・・・」
‘ダァンッ!’
「ぐっ!?・・・なっ、リグレット!?・・・貴様、一体何を・・・!?」
挑発めいた言葉も気にした様子なくむしろ軽く返す様子に話を続けようとしたヴァンだが、剣を握る自身の手を唐突に撃ち抜いた弾丸に痛みを覚え、視線を向けた先にいた銃を構えるリグレットに信じられないとばかりの声を向ける。
「見て分からぬのですか?・・・私は謡将の側ではなく、こちら側の人間だということです」
「っ・・・まさか、お前が裏切っていたなどとはな・・・!」
リグレットは油断もなく上の足場から降りてきながら貴方の敵だと告げ、忌々しげにヴァンは表情を歪める。
「・・・なっ!?こ、これはどういう状況だ!?」
「に、兄さんと教官が敵対してるっ・・・!?」
「っ・・・何故ここに来たアッシュ!?」
更にその場に来たのはアッシュを始めとした他のメンバーだが、予想外の場面だと三人が三人ともに驚きを隠せないままに声を大きくする。
「お前の企みを阻止しに来たと言いたいところだが、一体この状況はどうなってるんだ!?」
「それは私が聞きたいが・・・流石に一度落ち着きたい、不本意だが私はここで撤退する!」
‘ピュウイッ’
「なっ!?逃げるのか、ヴァン!?」
「言っただろう、私もどうしてこのような状況になったのか落ち着いて考えたいのだ。最も、それはお前やティア達もそうだろうがな・・・」
「に、兄さん・・・教官・・・」
「・・・くっ!」
それでも言いたいことを言わんとするアッシュにヴァンは混乱から落ち着きたいとグリフォンを呼んで弾丸に貫かれていない手でしがみつき、落ち着きたいのはお互い様だろうと言うと特にティアが右往左往と視線をさ迷わせる様子に忌々しげに声を上げる。
「ではさらばだ!」
「っ、待ちやがれヴァン!・・・くそっ、逃げやがった・・・」
その様子に隙を見たと撤退すると高らかに声を上げ飛び去っていくヴァンに、一拍遅れたアッシュは苛立ちと悔しさを滲ませた様子で吐き捨てる。
「・・・謡将を追いたいという気持ちは分かります。ですが謡将が言われたよう、我々も色々と落ち着いて知りたいことがあるのも事実です・・・そちらのリグレットを始めとした、貴女方の事をね」
「・・・そうだったな・・・!」
ジェイドはそんなアッシュに気持ちを切り替えるようくのいち達の方へ集中させるように言えば、アニスもそちら側の位置に来た三人の方にギラギラした視線を向ける。まるで敵を見るかのような目で。












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