女忍、躍動する

「それで、今リグレットは?」
「タルタロスを動かせる最低限の兵を残し、兵と共にタルタロスから降りています。今頃は謡将に気付かれぬ位置に潜んでいることでしょう」
「じゃあ導師は?」
「アッシュにわざと聞こえるように導師を連れていくと言った後、タルタロス内に留っていてもらってます。現状でアッシュが導師のいる部屋を訪れるとは思えませんし、私達の手の兵士以外いませんから下手に外に出てもらうよりはこちらの方が安全です」
「まぁそういうことなら一先ず段階としては良しかな?」
そしてどんどんと状況を確認するべく話をしていく二人だが、くのいちはそこで真剣な眼差しをディストに向ける。
「・・・それで、謡将がルークにかけたっていう暗示は本当に発動しないんだよね?」
「それは間違いありませんよ。謡将に暗示のやり方を教えたのは私ですが、本来のやり方に似た全く効果のない物を教え込みましたからその時が来たら彼は何故だと焦るでしょう・・・ただ素早く気持ちを切り替えられてルークを殺されたり、パッセージリングを攻撃されたりすれば厄介ですからそこを見誤る事がないように動くことは重要ですね」
「・・・そこから先は私達の仕事だから、ちゃんと動かないとね。ここでしくじったら旦那様の策が台無しになりかねないし」
そのままディストに暗示という単語を用い不穏な問いかけを向けるくのいちに、ディストが大丈夫としつつもタイミングは大事と告げた事に承知はしていると真剣に頷く。
「・・・二人とも、そろそろセフィロトの方に向かった方がいいんじゃないですか?時間的にもう余裕が無くなって来る頃だと思うんですけど・・・」
「そうだね、大方聞きたいことも聞き終わったしそうしよっか。じゃあディストはアクゼリュスに戻ったらすぐに周囲にいる兵をまとめて人目のつかない所に待避して、私達が第14坑道から出るまで待っといてね。それで分かりやすい合図を出すから、そこから出てきて」
「分かりました」
「じゃあ私は先に行くから、アニスは後できて。私の早さに追い付くのは厳しいと思うから!」
‘ピュンッ’
「あっ、お母さん!・・・じゃあディスト、後はよろしく!」
「えぇ、ではまた後で」
アニスはそこで気まずげながら早く行くべきと言うとくのいちは頷きつつディストに指示を出し、忍としての俊足を存分に発揮して瞬時に場を離脱していきアニスは慌ててディストに一言残して場を去っていく。












・・・少し時間は進んで場は変わり、アクゼリュス第14坑道の奥。セフィロトという場所へと続く扉は開かれていて、ルークとヴァンは二人でその最奥地にまで来ていた。



「・・・さぁ、力を解放するのだ!愚かなレプリカルークよ!」
「・・・・・・え?・・・師匠、何を言ってるんですか・・・?」
「・・・どういうことだ、何故暗示が発動しない・・・!?」
・・・セフィロトの最奥、パッセージリングという場所の前で本性を現すよう狂喜に歪んだ笑みを浮かべるヴァン。だがその言葉に何をとキョトンとした表情のままルークが首を傾げる様子に、ヴァンは疑問以上に苛立ちが盛大にこもった瞳をルークに向ける。
「・・・やはり、レプリカはレプリカということか・・・まさかこんな肝心な所で役に立たんとはな・・・!」
‘ツ~~~’
「えっ・・・せ、師匠・・・!?」
そのままヴァンは腰元から剣を抜き殺意をみなぎらせながら近付いていき、ルークも流石に様子がおかしいことに気付いて表情を強張らせた・・・どう控え目に見てもいいことが起こりそうにもない自身の状況に。














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