女忍、躍動する

「・・・んじゃ言いたいことに聞きたいことも互いに言っただろうし、そろそろ戻ろっかディスト」
「そうですね、そうしましょう」
「後、今の話の中身に関しては手紙にでもして旦那様の所に送っといてほしいな。まだ全部が済んだ訳じゃないけど、これからの事を考えると旦那様にはアッシュの事をどうするかをまず考えといてもらった方がいいだろうし」
「分かりました。その手紙は戻り次第出すようにはしますよ」
それで話はもうこれくらいでと言いつつ報告の手紙を出すよう頼むくのいちに、ディストはすぐに頷く。
「では、私はこれで」
「うん、またね~・・・さて、戻りますか」
そして簡潔に別れの言葉を残し飛び去って行くディストを見送った後、くのいちはルーク達の元へと歩みを進める。









「・・・おっ、戻ってきたな。どうだった、結果は?」
「収穫なしっす・・・やっぱりもう先に行ったかこっちの進路と別の進路を取ったかっすね。この感じだと」
「そうか・・・まぁ気にすんなよ」
「ありがとうごぜぇやす、ルーク様」
・・・それで夜営地に戻ってきたくのいちは一通りディストに会ったことなど微塵も感じさせない様子でルークと会話をし、少し離れた場にいたアニスの元へと足を運ぶ。
「・・・何か収穫はありましたか?」
「うん、今から話すね」
アニスの横に座ると小声で話し掛けてきた為、同じように小声で返していく。ディストとの会話についての流れを。









「・・・って感じだね」
「ガイもそうだし、アッシュもまずいことがある・・・って事ですか・・・」
「どうしたの?何か思うところでもあるの?」
「何となく、ですけど・・・謡将が六神将達にガイは自分の仲間だって言わなかった理由って、アッシュとガイの鉢合わせとかしてその裏事情を知って何らかの行動を起こされるとまずいとでも思ったからなんじゃないかなって思ったんです。その中でもある意味一番まずい行動は、事実を知ったからファブレを滅ぼすのに躊躇いを持たなくていい・・・みたいなことをガイが考えて行動に移すってことだと思います」
「あ~・・・それ確かに有り得るかも・・・」
・・・そして話を終えるがアニスの考え込んでいるような様子に何があるのか聞くと、ガイの取るだろう行動の可能性を上げられくのいちは嫌そうながらも納得する。その後に戦争まっしぐらになりかねない最悪な可能性に。
「それにアッシュもアッシュでガイの事を知ったら、ルークはともかくファブレは滅ぼさせんとかってガイをどんな手段でも止めに入ると思います。謡将がガイの手綱を引くと言っても、それを信じないで行動に移す形で」
「そうなったら謡将の企みは一巻の終り・・・となれば、ガイとアッシュの顔合わせを阻止する意味では何も言わなかったのは理解出来るね」
更にアッシュ側の行動の怖さもあると言うアニスに、くのいちは更に納得する。その危険性の高さに。
「ただそうとなるなら、ガイとアッシュの顔合わせって出来る限り避けたい所だね~・・・事実を知って、下手にとち狂いでもしたら最悪な事になりかねないし」
「最悪って?」
「ルークとアッシュのどっちかか、もしくはどっちも殺しにかかる状況だよ。謡将が裏切ったのならその裏切りの原因を排除するか、もしくは二人いるならどちらかくらい後々の事の心配もないから殺してもいいとかって考えを持つことかな」
「うわぁ・・・前半もどうかと思うけど、後半が最悪としか言えない・・・」
そんな話を受けた上で新たな可能性を思いつき口にするくのいちに、アニスは心底からげんなりとした様子を浮かべる。もしもとはいえ、最悪すぎるガイの行動に。










8/23ページ
スキ