認知し、認知出来ないが故の距離

‘コンコン’
「失礼します」
「っ、んだよ。何か用か?」
関係が変わる前兆にそのまま話は続けられる・・・かに思われた時、兵士が控えめなノックと共に入室してきたことでルークはとっさに演技の仮面を被り用向きを問う。
「謡将がお呼びです。甲板に来るようにとの事です」
「師匠が?・・・分かった、下がれ」
「はっ、失礼します」
それで兵士がヴァンの呼び出しについてを報告した事でルークは手を振って退出を命じる。
「・・・行くのか?」
「・・・今の俺は師匠の事を信じてるって事が嘘だってバレる訳にはいかないからな。それにこれは前にもあったことだし・・・別に騙されてくる気はないから気にしないで二人は過ごしててくれよ。結構時間かかると思うしさ」
「・・・あぁ、そうさせてもらうぜ」
「じゃあ行ってくる」
兵士が退出したのを見計らいユーリが確認するとルークはまた素に戻りつつ微笑を浮かべながら頷き、ゆっくりするように言い残し自身も部屋を出ていく。



「・・・行きましたね」
「あぁ・・・」
二人部屋に残されたヒューバートとユーリは互いに顔を見合わせる。
「まぁあの様子なら謡将に騙される心配はいらねぇか。つっても本人は前に騙されてるから同じ轍を踏むとは思えないけどな」
「えぇ、それは僕も心配していませんが・・・むしろ気になるのはやはり、ティアさんですね・・・」
「あぁ、そいつはな・・・」
そのままルークに関する心配よりもとティアの名に二人は複雑そうに顔を歪める。
「先程ユーリさんはティアさんの様子で面白がってこちらに来ましたが、話を聞いてみてあれは相当にこだわりというか・・・依存に近い物を感じましたね」
「まぁ面白がってた事に関しちゃ否定はしないが・・・あれを面白いとは言えないな。どっちかと言ったら・・・深刻だ」
「ローレライが言っていたことは間違ってはいませんでしたね」
「あぁ・・・これまでの旅で鬱憤が溜まってたのもあんだろうが、あそこまでキレるってのは相当だな」
二人はティアについての苦い気持ちを語りつつも、自然にローレライの名を出す。まるでティアがこの世界の未来から過去に戻ってきたのを知ってるかのよう・・・いや、事実知っているのだ。
「こちらのローレライより話を聞いた時はそこまでするのかと思いましたが、あの姿を前にすれば頷かざるを得ませんね」
「まだルークは違和感を覚えてる程度だとは言ったが、互いの事実がどっちかでも互いにでも明らかになったら・・・正直、いい予感はしねぇな」
「えぇ・・・特にティアさんの方は厳しいですね。その事実を知ったならルークさんの事を責めつつ・・・今度は絶対に逃がさないと、ルークさんを無理矢理にでも自分の元に拘束しかねない」
「だろうな・・・」
その訳とは二人が話したようこの世界のローレライからも話を聞いたからなのだが、だからこそ二人の考えはティアに対する不信感に満ちていた。どう考えてもルークの未来を狭め奪うだろう行動を間違いなく取りかねないために。
「ま、本当にわがままだった頃のお坊ちゃんであっても今のルークであっても、流石にんなことを認める訳にはいかねぇよな」
「えぇ、ルークさんを助ける為という元々の目的を置いて考えても感心出来る事ではありませんからね。それにあのような姿を見たなら尚更です」
「だな・・・んじゃ今の話を皆に話に行くか」
「えぇ、ゼロスさんではありませんが協力するかしないかを選んでいただくには格好の材料になるでしょうしね」
そんなティアも止めたいと会話を交わす二人は意気投合して部屋を出ていく、確かなルークに対しての純粋な気持ちを抱きながら・・・















様々な想いを知り、想いを語る面々



だからこそ生まれる新たな関係は未知の物となり可能性を生む



以前より近くなるか、もしくは遠くなるかの可能性を・・・



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