認知し、認知出来ないが故の距離

「まず言っておきますが僕達の実父は僕を養子として送り出すことを直前にまで言わないまま、僕をオズウェルに送り出しました。いきなりの事に当時の僕は戸惑いつつも、そうすることを勝手に決めた実父への怒りを徐々に覚えていきました・・・ですがそのようなことをしてもオズウェルの家に送られた以上僕に出来るのはオズウェルの家の子として暮らすのみで、実父に何をする事もなく生きてきたのですが数年が経ったある時に実父が戦の中で命を落としたとの報告が来ました」
「っ・・・それで、ヒューバートはどうしたんだ・・・?」
「詳しく話をすると長くなるのである程度かいつまんで話をしますが、実家に戻ることになった僕は兄達と再会した後立場の違いに考え方の違いもあってしばらくギクシャクした関係でしたが時が経つにつれ次第に解消されていき、最後に母からいかに実父が苦しみその選択をしたのか・・・という話を聞かされ、ようやく僕に兄は実父に対する負の感情を忘れるとまではいかずとも受け入れる事が出来るようになりました」
「・・・それはよかったって、言っていいのか分からないけど・・・それで、俺はヒューバート達の父親に似てるって言うのか?」
「えぇ、貴方の気持ち・・・僕もですが兄も分かる気がします。人に言いたくても言えない・・・もっと言うなら言ってしまうと余計にどうにもならないことになりかねない・・・そう思うだろうという気持ちが」
「っ!」
そこから自分達と父がいかに複雑な関係だったかを容易に想像出来るように話したヒューバートにルークは自分はそうではないと言いたそうに声を上げるが、気持ちが分かると続けられた言葉にたまらず息を呑んだ。ヒューバートのその言葉が言い得て妙と、そう感じてしまった為に。
「貴方は自分の気持ちを隠してこれまで生きてきた、それが他人の同意を得られないだろうと考え・・・確かにそう思い、感じた事は全くの間違いとは言えない。ですがそう言った気持ちと言うのは本来明らかにされるべきもの・・・でなければ悲しいすれ違いを産みかねません。僕達のようなすれ違いを」
「・・・でもそれだと、ガイ達にも俺の気持ちを言わないといけなかったことに・・・」
「そこに触れるのはやめておきましょう。今更の話です・・・それよりはこれからの事です」
ヒューバートは徐々に気持ちを込めた言葉を向けだすが、その言葉に引きずられてルークの表情に影が落ちる。そんな様子に静かながらも強い言葉で制止をかけた後、話を元に戻す。
「僕達は貴方の事をローレライから聞き、実際に貴方に会い話を聞きました。個人個人が貴方に対してどのような考えなのかは分かりませんが、少なくとも僕は貴方の本音を聞いた以上この世界で貴方が行う事に協力させてもらいたいと思います。これは実父と貴方を投影したからと言われるかもしれませんが、そう言われようと構いません。本気で行います」
「それは・・・」
「・・・そいつには俺も同意させてもらうぜ」
「ユーリ・・・お前まで・・・!?」
そしてヒューバートからの確かな協力宣言が力強く告げられた事にルークが戸惑う声を上げる中、ユーリからも同様の宣言がされた事に目を見開く。
「ま、正直に言うなら俺はヒューバート程熱があるわけじゃない・・・が、実際に話してみて協力したいって思ったのは事実だ・・・まぁ難しいことは考えんな。素直に協力を受け入れればいいんだよ。それに反対しようにしたって全員を説得するなんざ難しいってお前も分かるだろ?」
「う・・・まぁそれは、な・・・」
「そう、そういうことだ・・・今は無理だってんなら徐々に受け入れていけよ、皆お前の為に来てるって事をな・・・ルーク」
「っ・・・うん・・・そうする・・・」
ユーリはそのままルークにいつものようだがその笑みを優しげに向け、しまいには前だったらお坊ちゃん呼びだった呼称を名前呼びへと変える。その事にそう呼ばれてきたルークも気付くが自分へ向けられた理解するようにとの声に答えようと、戸惑いながらも頷いた。










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