認知し、認知出来ないが故の距離

「・・・なぁ、ルークはどうした方がいいって思ってるんだ?」
「・・・んだよ、なんでそこで俺に振るんだよ・・・」
そんな考えに没頭しかけていたが、ガイから困ったと判断を伺う様子に現実に戻され半分素も混じりつつルークは困ったように頭をかく。
「・・・別にいいんじゃねぇのか、このままで?あいつはこのまま俺らに付いてってバチカルに行くって決めてるようだし、わざわざ断る理由もねーだろ」
「あぁまぁ・・・それはそうなんだがな・・・その話をされてから彼女の機嫌があんまり良くないのはお前もさっき見たから分かるだろ?あんな調子でな・・・だからどうするべきかを聞きたいんだが・・・」
「あいつの機嫌の事を俺に言うなっつーの。それに俺があいつのご機嫌を伺うなんか真っ平ごめんだし、大体どうやりゃ機嫌が良くなるかなんか俺にわかるわけねーだろ」
「う、う~ん・・・そう言われるとなぁ・・・」
しかしルークにも良案が出ることはなく放っておけと言うが、再度のどうにかとの声に分かるかと一刀両断で返しガイも弱り気味に首を傾げる。
‘ガチャッ’
「失礼・・・ん、なんだ。あんたも一緒か」
「・・・あぁ、なんだ。ユーリか」
「・・・」
そんな時に部屋の扉を開けてユーリにヒューバートの二人が中に入ってきてガイがホッとしたように声を上げるが、視線が外れた事を機にルークは少し間を空けた後に足元にいたミュウに手を延ばす。
「みゅう?」
「・・・ほれ、ガイ」
「ん?どうしたんだルーク、俺にミュウを渡して・・・」
そしてむんずと頭をわしづかみしてキョトンと声を上げるミュウを手渡すが、受け取りつつも意図を理解出来ずにガイはまた首を傾げる。
「ティアの機嫌を取りてぇんだろ?だったらこいつを渡してこいよ。ちょっとはマシになるはずだから」
「そう、なのか?」
「そーそー・・・おらティアに機嫌を直してほしいってガイと一緒に言ってこい。それで機嫌が直ってしばらくするまで戻ってくんなよ」
「はいですの!」
そんなガイに説明をした後にルークが指示を出すとミュウは元気よく返事を返す。役目を承って嬉しそうにしながら。
「ほら行くなら行けよ。どうせしばらく船の上なんだろうし機嫌が悪いからって当たり散らされんのは俺も気分よくねぇから、さっさと機嫌を取ってこい」
「あぁ分かった。じゃあな、ルーク」
そして早く行くように追い払うように振りつつ言えば、ガイも頷きミュウを持ったまま部屋を後にしていく。
「・・・んで、体よくミュウを追っ払えたから本音で話せるってか?」
「・・・あんまり誉められた手段じゃないのは分かってるんだけどな」
「・・・成程、こいつは本当に違うもんだな。俺の知るお坊ちゃんと」
それでガイが部屋から出て気配が無くなったのを見計らいユーリが皮肉げに話し掛けると、ルークが寂しそうな苦笑を浮かべる姿に深く納得の声を上げる。
「・・・色々話したいことはユーリさんにもあるでしょうが、まず僕からお聞きします・・・ガイさんとルークさんはどんな話をしていたのですか?先程ティアさんが勢いよく出ていったので何事かあったと思うのですが・・・」
「あー・・・見られてたのか・・・まぁ俺が挑発的に言葉をかけたから悪いのは俺なんだけどな・・・」
「挑発的?」
「・・・とりあえず何で俺達が港に残ってたのかってのもまとめて説明するよ。多分ヒューバート達もその事について知りたいだろうし、その方が手っ取り早いだろうしさ」
「そうですね・・・そうしてくださるなら助かります」
続いてヒューバートがティアの行動の理由についてを聞くと、気まずげながらルークが一連の流れもまとめて話すと言い出したことで眼鏡を押さえながら了承を返す。









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