認知し、認知出来ないが故の距離

「・・・んで、いつまでそうしてんだよ?」
「・・・えっ?」
「いや、だからそんな呆けた顔して立ってんのかって事だよ。いるならいるで話に加わるか、そうでないなら出るかどっちかにしろよ」
「っ・・・」
それでガイが部屋の中に入り自分の前に来た所でルークはティアに声をかける、どうするかをはっきりしろと。その声にティアはどうするかと視線をさ迷わせ、取った行動は・・・
「・・・出るわ」
‘ガチャッ’
「・・・おいおい、よかったのかルーク?」
「知らねーよ。いるならいるか居たくねぇなら出ろって言っただけだし」
明らかに不満だと言わんばかりの様子での退出だった。その姿が見えなくなりガイがいいのかと確認するが、ルークは知ったことではないと言い切る。
(・・・何か本当にティアの様子が違うな・・・前だったらそんな言い方ないじゃないって言ってきたと思うんだけど・・・)
だが内心はまたティアに対する印象の前との違いに考えが行っていた。らしくないと。
「そうか・・・でも何か少しホッともしたな。あんな事があった後だとな・・・」
「ん?何の事だよ?」
「あぁ・・・ちょっとな・・・」
ガイがそんな話に珍しく安堵した様子を浮かべた事にルークが疑問に思うと、複雑そうに語りだす。ユーリ達に発端したティアの連行をヴァンが命じられてたという流れを・・・






(あぁもう!うまくいかないわ!折角ルークと会えたと思ったのに・・・!)
・・・一方部屋を出たティアはずかずかと通路を歩いていた、怒りのままに誰が見ているかを気にすることもなく。
(ルークもルークだしガイもガイよ!折角私が場にいるのだからいてもいいくらいは言ってもいいはずよ・・・あぁもう!)
その怒りはルークにだけでなくガイにまで向けられるのだが、怒りに染まるティアは気付かない。ガイにまでそうすることを求める自分が、いかに自分勝手な女王様のような思考をしているのかを・・・



「・・・随分とお怒りのようですね」
「僕達の姿も見えていないようだったな、あの様子では」
「・・・あんだけあからさまって事はあのお坊ちゃんの所で何かあったか?」
そんなティアが通り過ぎる様子を通路の脇で立って見ていたヒューバートにリオンにユーリの三人は呆れを浮かべていた。全く冷静さを保つ気が見えなかった姿に。
「・・・もうちょいしたらお坊ちゃんの部屋に行ってみるか。俺はまだ実際に話しちゃいないしな」
その中で一人ユーリは楽し気に口元を笑ませる。ルークに会おうと考え。






「・・・って訳でティアは不機嫌になって、俺もどう対応していいか分からないから正直困ってるんだ。俺もそんなこと聞いてなかったから、どう接していいか分からなくて・・・」
「ふ~ん・・・」
・・・それで場はまた変わりルークとガイの二人に戻るのだが、ガイが話を終えて複雑そうな顔を浮かべる姿にルークもなんとも言いづらいと頭をかきながら気のない声を上げる。
(ティアの捕縛の命令、か・・・・・・今まで考えた事はなかったけど、前に師匠がその事で捕まえられたって事を考えるとティアだけそれがなかったっていうのは本当はおかしい事なんだよな・・・確かティアとの共謀とか言われてたんだから、ティアだけそうじゃないってのって・・・)
だがその心中では苦い想いを感じながらも以前の経験とルミナシアで暮らして得てきた知識を総動員した結果、内緒にしていたのはおかしいことじゃないとルークは結論づけていた。
(それを言わなかったのは話にあったように話をしたらティアが嫌がるって思っただろうって事と、師匠がそうしないでくれって言ったんだろうな・・・それで内密に事を済ませようとした師匠に加えてモースが何かしたから表向きはティアに何もないようになったんだろうし・・・)
更に表沙汰にならない理由をヴァンとモースにあると考えるが、だからこそルークは苦い想いを感じる。
(でもティアはそれを知ってしまった・・・だからあぁなったんだろうけど、これはユーリ達を責める訳にもいかないんだよな・・・ユーリ達からしての疑問を言っただけなんだろうし・・・)
その苦さはティアの変貌の理由のユーリ達に対してだが、ユーリ達が決して悪い訳ではないからこその苦さだった。疑問に思ってもおかしくないことが表に出たが為、ただそれだけのことだと理解しているために。









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