認知し、認知出来ないが故の距離

「ルーク君には致命的な程に自信はない。自分に対してはね。けど人を信じることは出来る・・・その代わりと言っちゃなんだけどね」
「え?・・・それってどう言うことなのかよくわからないけれど・・・」
「まぁ当たり前のようなことに聞こえるからクレス君の疑問も分かるよ、それは。でもルーク君とこれから接する上で重要になるのよ。ルーク君の信頼を前以上に得て前よりいい関係を築きたいなら・・・自分も同じ位置に立って信頼を向ける事がね」
「自分も同じ位置に・・・?」
そしてゼロスから出てきたのはルークと同じ位置に立って信じることとの結論だが、未だクレスは分からないと首を傾げる。
「・・・さっきの話を聞いてたから覚えてるでしょ。ルーク君はティアちゃん達に上から目線で接されてた事は。んでそれでもそれにすがってティアちゃん達を信じるしかなかったことも・・・それって五分五分の関係じゃない訳だけど、ルーク君は相手を信じてることは確定してるってことは分かるよね?」
「うん、それは・・・でもそれなら僕達もルークを信じればいいんじゃないのかい?ルークは僕達の事を信じてくれるんだから・・・」
「そう。簡単に言えばそういう事・・・だけどルーク君が自分に自信がないって言ったっしょ?それに今まで自分の心の内を絶対に明かさなかった経緯に後ろめたさもあって、簡単に人を信じることが出来ない・・・だから単に信じるだけじゃなく、ルーク君を本当の意味で理解した上で同じ立場に立って行動する事が必要だって俺達は話したのよ。そうでないとルーク君は本当の意味で俺達を信じてくれないのは目に見えてるってね」
「「「「!!」」」」
更にじっくりとクレスと会話を交わした上で最後にルークに本当に信じてもらうために必要なことだと告げたゼロスに、クレスだけでなく周りの面々も一気に目を見開いた。
「驚くのも分かるけど・・・ルーク君に根付く意識を変えるか、もしくは本当の仲間になりたいならそれくらいの気持ちがないとダメだと思うぜ。もちろんルーク君自身にはそんな意識はないだろうし仲間って思ってくれてるだろうけど、無意識の状態では何歩も引いてるだろうし言っちゃいけないと思ってることは言っちゃくれないだろうね・・・そんだけ根深いのよ。ルーク君の中に根付いたモノは」
「・・・だからあのお坊ちゃんを信じて理解しろってことか?その根付いたモノってやつを乗り越えて仲間になりたいってんなら・・・」
「そういうこと・・・一つ言っとくけど興味本意や別にそこまでする必要はないって思ってんならそれでいいと思うから、無理はしなくていいぜ?」
「っ・・・なんかトゲがあんな・・・」
そんな姿にその必要性を語っていくゼロスだが、どこか疑わしげな声を上げるユーリにどこか喧嘩腰な言葉をニヤリとした笑み付きで返し頬をひきつらせる。
「・・・そこまでお前とルークが仲が良かった覚えがないのだが、そんな言い方をすると言うことはお前もルークと向き合うつもりなのか?」
「・・・まぁ俺様もそんなつもりはなかったんだけどさ、こっちに来たのもそこまで乗り気じゃなかったし・・・でもルーク君と会って話してみて、考えが変わったことは確かだけどね。それは」
「・・・むぅ・・・」
ユージーンがそんなゼロスらしくない姿に確認するように声を向けると、自分自身でもらしくないと感じてるかのような苦笑気味の肯定に思わずうなり声を上げる。その姿に嘘を感じ取れなかった為に。
「・・・まぁ俺の事はともかくとしても、皆もどうルーク君と接するか考えといた方がいいぜ?港まですぐだし、帰りたいなら帰ってもいいってルーク君が言ってたからここに来たのは義理程度に考えて来たんなら、この辺りで戻ることも考える形でさ」
「「「「・・・」」」」
ゼロスもそんな空気を感じ誤魔化そうとしたのか口を開くが、誰も考え込む形になり場が静かになった。その言葉が軽い口調とは裏腹に、今すぐ選択を強いられてるかのよう重かった為に。







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