認知し、認知出来ないが故の距離

「・・・しかし随分と酷いな、あのティアは」
「えぇ、私もあれだけとは思わなかったわ」
そんな中でユージーンの切り出しの言葉にルーティの頷きと共に、周りの面々も同意して頷く。
「僕にカロルはアドリビトムで会ってないから分からないのですが、そこまでなんですか?」
「うん、まぁ・・・あんな人じゃないって思ってたんだけれど、少なくともあそこまでとは・・・」
「そいつには俺も同意する。少なくとももうちょい冷静だった印象があったんだが、あの姿を見て思ったよ。周りの目を気にして自分を抑えていたけど、本当はあれが本音なんだとな」
「・・・猫を被るというか、気性を抑えていただけというか・・・とにかくあれが本当のティア=グランツだとユーリさん達は見た、ということですか・・・正直に言えば面倒ですね、あの我の強さは・・・」
ヒューバートはティアにルミナシアで会ってなかったことから印象を改めて問うが、クレスにユーリと明らかに印象が良くない方に変わった返事を聞き眼鏡を押さえながら首を横に振る。面倒だと。
「お~、こっちにいたんだ」
「・・・ゼロス?なんでこっちに?」
そこに現れたのは気楽そうな笑顔を浮かべたゼロスでカロルが訝しげに声をかける。
「ちょいと報告に来たのよ。今ルーク君達は港で待ってるってね」
「港で?どう言うことだ?」
「まぁ今からそっちの方についても話をしたいんだけど、そっちはどうしたの?休憩所覗いても皆出てる感じがしたから探しに来てみたんだけど・・・」
「・・・そうだな。ではこちらで起きた事についても話をしておくか」
ゼロスは報告に来たと言いつつも今の状況に疑問を持ち、ユージーンが情報交換をすると言い出したことに周りの面々も頷いていく。















・・・それからクレス達はゼロスと情報交換をした。互いの持ちうる情報を。



「・・・ふ~ん、ティアちゃんがね~・・・」
「・・・あまり意外そうに思ってなさそうだな、ゼロス」
「い~や?これでも驚いてんのよ俺様?でも納得もしてんのよ」
「納得?」
それで互いに交換を終えた所でゼロスが大して驚いた様子を見せてないことをユージーンが指摘するが、納得もあるとの言葉にゼロスに視線が集中する。
「ティアちゃんってさ、俺からしてみりゃ分かりやすい子だったのよ。可愛い物が好きだけどそれを隠そう隠そうって気持ちが露骨に見えてたし、嫌な事に関しちゃキッパリ淀みなく返すからね。その点でティアちゃんって自分の気持ちを抑えようとはしても本音以外喋らないというか、喋れない子って俺様の中にあんのよ」
「喋らないじゃなくて喋れない・・・」
「そう、似たようなニュアンスだと思うけど結構重要なのよコレ?・・・ティアちゃんは言いたくないことを隠そうとするけど、それを完全に誤魔化す事なんて出来ない。自分の言いたいことを言えないんだから言いたくないことを言うことに抵抗感を持って、結果として嘘に誤魔化しの言葉があからさまに分かりやすい物になる・・・だからここで揉めた時に出てきたティアちゃんの顔の事を聞いて納得したのよ。あの子らしくもあるなって」
「・・・成程。あの時の顔がティアの本質とお前は思った訳か」
「そーいうこと」
その視線を大して気にせずティアについて感じていた自分の話をするゼロスにユージーンを代表として一同は納得するが、その反応の後に何とも言えない微妙な笑みを浮かべる。
「・・・ま、その点ルーク君に関しちゃ俺様も騙されてた形だからどうとも言いようがないんだけどね」
「・・・ルーク、か・・・話を聞きはしたけど、本当にアドリビトムで見せてた顔は演技だったんだね・・・」
「落ち込む必要はないってクレス君。向こうも向こうで気まずいって思ってたようだしさ」
そして話題をルークの方へと移すがクレスの表情の暗くなる様子にゼロスは励ましの言葉をかける。










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