認知し、認知出来ないが故の距離

「いい、のか?ティア・・・」
「いいも何もないわ・・・私は何も間違ったことはしてないし、そんなことを言われるなんて屈辱以外の何物でもない・・・あらぬ疑いを払拭するためにも行くわ、バチカルに・・・!」
「「「「・・・」」」」
流石にヴァンも戸惑わざるを得なくなったが、それでも聞かざるを得ないと思ったのだろう。声をかけるとティアは自分は間違ってないと頑として言い張り、ヴァンまでもを含んだ面々が言葉を無くした・・・あそこまで言われたのに自分は悪くないと全く揺るいでいない、その考えの在り方に。
「・・・・・・もうこの話はここまでにしましょう。それより謡将もここからバチカルに戻るんですか?」
「・・・うむ、ルークの無事を確認してガイ達と合流した事からもうここに留まる必要もなくなった。そうしようと思っていた所なのだが・・・何故導師はここに?」
「あっ・・・その事について言ってませんでしたね・・・」
少し間が空きようやく口を開いたのはクレスで、話題を振られたヴァンは更にイオンに疑問を向ける・・・だが三人に流れる微妙な空気から明らかにティアの事から目を背けよう、背けたいとしてるのが丸わかりな光景だった。















・・・それで状況の説明の為、ティアによる空気を変えるためと休憩所へ入り情報交換をしたイオン達。
「・・・成程、そう言うことでしたか。では私も尚のこと導師達と共に行かなければいけませんな」
「一緒に来てくれるのですか、ヴァン?」
「えぇ。聞いた所導師達は六神将率いる神託の盾に襲われているとのこと。私がいれば彼らに対する抑止力となるでしょう。それに先程も言いましたが私もバチカルにまで行かねばならないので気にしないでください」
「分かりました、頼りにさせてもらいます」
そして話をし終わりヴァンも付いていくとなったことにイオンが笑顔を浮かべるが、端で一人見ていたティアは厳めしい表情を浮かべていた。
(兄さんが一緒に・・・なんで?前だったら先に行ってるはずだったのに・・・)
その訳とは前と違いヴァンが先に行かないことだ。以前だったなら先に港に直行していたはずと。
(ルークがいないから?どうして?・・・どうだとしてもこのままだとアリエッタが港を襲うかもしれないから兄さんには港に・・・あっ、でもあの時は確かアッシュがアリエッタに命じてルークの同調フォンスロットを開くためにやったことだからもしかすると港に襲い掛かる事はないかもしれないわ・・・ルークの事をアッシュが知らないなら・・・)
その理由を深く考えるがその理由に辿り着けず考えを港襲撃に移行すると、そこでティアは襲撃はないかもと考える。
(まだどうとも言えないけれど十分に考えれることね、これは・・・兄さんが先に港に行かないならそう願いましょう。アリエッタが港を襲わない事を)
ティアはそのまま願うと心中で述べる。襲撃がないことを。



・・・だがそこまで知っているのにあえて自分一人ででも先行しもしもの場合に備えない、と言うのは怠慢と呼べるのではないか?自分が動けばもっと状況は良くなると、何故そう考えないのか?・・・ティアは甘えているのだ。自分は先を知っているから、多少予定調和からズレていたとしても都合のいいことを見つければ自分の思う通りに事態は動くと。

だがその考え方で動いて生き残れたのはあくまでヴァンが身内可愛さにティアを見逃していたことに、ルーク達がフォローを入れていたからに過ぎない・・・しかしティアがそう考えることはない。それがいかな結果を生んだ上でどう事態が動いているのかを・・・















・・・ティアの安穏とした考えはさておき、一応国境まで警戒しながら来たこともありイオン達は国境の休憩所で休んでから出発する事となった。ヴァンもまた一緒の形でだ。

そして休憩所で休む一同だが、夜になった所でアドリビトムの面々は休憩所を抜け出し平野部に集まっていた。








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