認知し、認知出来ないが故の距離

「ユ、ユーリさん・・・確かに聞かなければと思ってましたけど、何も今ここでは・・・」
「どうせ言っとかなきゃいけない事だろ、これは。それに事実かどうかは当人に聞けば分かることだ・・・どうなんだ、謡将?」
「う、むぅ・・・」
「っ・・・!」
イオンは気まずげにおろおろユーリに声をかけるが、一向に構う様子を見せず改めて問いを向けるとヴァンも極めて答えにくそうに唸りティアは何をと怒りに震えながらユーリへと視線を向ける。
「・・・・・・分かった。答えにくい質問ではあるが、正直に答えよう・・・ティアについても連れて帰れるのなら連れてこいと言われて私はここに送り出されてきた。それは確かだ」
「っ!?」
だがヴァンが観念したよう返した答えにティアはすかさず驚き、戸惑いに目を見開きそちらに視線を向けた。まさかの予想を裏切る答えに。
「じゃああんたはこの姉ちゃんを捕らえに来もしたって事でいいんだな?」
「・・・出来ればその事実は言いはしたくはなかった。兄という立場もあるが、その事実をティアに打ち明けてしまえば素直にバチカルに来る可能性が薄れると思ったのでな」
「・・・っ!」
更にユーリからの追及にヴァンは苦い顔をしながら答え、ティアの表情は一層ひきつった。
(なんで・・・前はそんなこと全く言われなかったのに・・・!?)
そして内心は混乱に満ちていた。何故そんなことになっているのかと。



・・・そもそも、ティアは考えが及ばない。前も今も自分の行動は間違いではないと信じて疑わずにいた、ヴァンを襲う為にファブレ邸を襲ったことは何ら恥じることではない・・・世界を救うためなのだから必要な事だと。

しかしそれはあくまでティアの身勝手な考えであり、相手の立場を一切考えていない物・・・そんな物にファブレやキムラスカが無条件で許しを与える事の方が有り得ないのだ、本来なら。

だからこそ以前もヴァンにバチカルに連れて戻るようにと言い渡したのだが思いの外素直に帰るティアに荒事が起きることなく終わり、それでバチカルに戻ると・・・内密でモース達がティアに下した処置はルークと共にアクゼリュスで消滅してもらうと言うもので、つまりは死だった。そしてそれを直に言い渡した所で素直に承服するはずがないのは目に見えている故に、何も言わなかったのだと。

しかしティアはそう処置を取られた事を言われなかったからと全く考えることはなかった。これまで自分は間違っていなかったのだからと、今までを振り返ることもないまま・・・もっともティアの性格を考えると、振り返った所で自分の非にまず気付かなかっただろうが・・・



「ねぇ、それを今ハッキリ言っちゃった訳だけどどうするのこれから?」
「えっ・・・?」
「・・・どうする、とは?」
そんな混乱にルーティが更に一石質問を投じ、ティアが声を上げヴァンが慎重に先を促す。
「だって今この子にそういった狙いがあるって言ったわけじゃない。それでどういう風にしてバチカルにまで連れていくのかってことよ。素直に行きたいなんて言うと思えないし」
「そう言うことか・・・私としては手荒なことはしたくないから、出来れば素直に付いてきてもらいたいのだが・・・」
「・・・行くわ、私」
「っ・・・!?」
ルーティはそこからティアが嫌がった場合の事を聞きヴァンも表情を悩ましげに変えるが、当の本人が敵意にぎらついた表情と声で行くと決意を表明すると周りの面々から信じられないといった空気が溢れた。







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