焔の決意と知りし者達

「・・・とりあえず今日はもう解散していいわよ、皆。私はライマに報告用の手紙を書くから。それとわざわざここに来てもらって悪いけど、ルークの行方もわかったからもう帰りたいなら帰ってもらっても構わないわ。そうしたいなら後で私に声をかけてちょうだい。手続きを済ませるから」
それで気を取り直しアドリビトムのリーダーとしての顔でこれからの事について指示を出せば、大半のメンバーは顔を見合わせたり会話を交わしながら船の中へと入っていく。
「・・・」
「・・・複雑そうね、アンジュ」
「えぇまぁ・・・でもそれは他の皆も似たような物でしょうね」
アンジュはその姿をなんとも言えない様子で見ていたが、自分に近付き話しかけてきたジュディスに苦笑気味に返す。
「ローレライから事情を聞いた時は信じられなかった・・・いえ今も半ば信じきれてないのが正直な所よ。ルークにあんな過去があったこともだけど、全部が全部アドリビトムで見せてた顔が嘘だったなんて・・・」
「・・・それは他の皆もそうでしょうね、現に私もそうだから。でも知ったからには皆関わらずにはいられない・・・アンジュは帰りたいなら帰っていいと言ったけれど、この件が終わるまで皆帰らないと思うわよ」
「えぇ、でしょうね・・・」
更に続けてまだ信じられないと漏らすアンジュだがジュディスが自分も含め皆そうと言い、かつ事態が収集するまで終わらないと言ったことに重々しく頷いた。そうなることを確信して・・・












・・・それから数日間の間で、バンエルティア号から降りると言い出した者は一人もいなかった。メンバーが連れてきた臨時の人員に関してもだ。その辺りはアンジュも少し意外ではあったが、それはそれでと何も言わずに済ませていた。

そんな中でアンジュが出した手紙の返信がライマから届き、再びローレライが現れた事で一同は甲板に上がりその手紙を拝見する・・・が、そこに在った手紙の中身に一同はローレライの言ったことの意味を知った。



「・・・こんな、こんなことって・・・!」
『どうやら我の予想通りだったようだな』
・・・一つ、また一つと皆を代表してアッシュ達から届いた手紙を見ていったアンジュ。だがその表情は次第に愕然とした物へと変わっていった。
最後の手紙を握り締め震えるアンジュに、ローレライの最初から分かっていたと当然のように紡がれた声が一同にやけに響いて届いた。
「ローレライ、貴方初めから・・・ルークの事をアッシュ達が総じて罵ることを確信していたの・・・?」
『そうでなければ手紙を送れなどとは言わん。アッシュはどのようなルークでも嫌っていたであろうから例外とするにしても、ティア達が望むルークとは自身にとって都合のいい存在だ。態度に口調が悪ければそれを嘲り貴族らしくないと下に見て、かといって素直でいても自分が心理的に上であり正しいと信じて疑わないからルークが気持ちを漏らしただけと考えずにただその考えは卑屈だなど前向きではないなどという・・・我も向こうの我から間接的にしか情報を受け取ってはいないが、ルークの為と言いつつ結局は根幹の部分でルークの事を否定する輩を何故信じれようか・・・!』
「「「「・・・」」」」
アンジュはその声に力なく確認を取るよう質問を向けるが、ローレライから返ってきた多大な嫌悪に満ちた声に一同はティア達を擁護する言葉など出せなかった・・・何せルークが死んだと取れるような証拠が見つかったと言うのに、悲しみを語りつつも結局は原因を作ったルークが悪いと手紙には書いているのだ。



例としてまずガイの手紙の中身を上げるがルークが自分に相談してくれればよかったのに、バカな奴だ・・・と要約して書いてあった。まぁこれだけならまだ許容範囲と言えない事もないが、他のメンツも似たような中身の手紙だったことがガイも含めたティア達がいかにルークを下に見ていたのかを示していた。ティアとアニスの手紙には悲しんでると言いつつ結局最後は自業自得だと取れる言葉が書いてあった、ジェイドとナタリアとヴァンはガイと同じく言葉は違えど相談してくれればと書いてあった、アッシュに至っては最早論外で悲しむ素振りなど一切なく「あんな屑など死んで当然だ」とまで書いてあったのだ。



『誰がルークの気持ちを考えたと言うのだ・・・例え演技をしていたというのを知らないにしても、あまりにも誰もルークの姿を見ていな過ぎる・・・!』
・・・そんな事を言えるティア達を知っている。そしてルークの本当の気持ちに考えを知っているからこそローレライは自身の想いを吐き出した。ティア達を信じられないと、身を切るような想いのこもった声で。






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