if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 後編

「じゃあ俺は行く・・・アッシュにも話をしに行かねばならんのでな」
「あ・・・ライマが落ち着いたから多分もうアッシュや他の皆がアドリビトムに行くことはないとは思いますけど、もし何らかでライマをまた出るような事態になっても船長のチャットはアッシュ達の事を歓迎しないって言っていました」
「・・・それはつまり、それだけチャットという人物にアッシュは嫌われたということか・・・」
「はい・・・今の流れに関係無い事かもとは思ったんですが、もし俺がライマにいなくていいってなったならいつまでいれるかは分かりませんが・・・またアドリビトムに戻ってしばらくは在籍したいと思いました。今までアッシュ達とのことで迷惑をかけましたし、チャットには俺は来てもいいとは言われたんでせめてその迷惑分くらいは働きたいですし、それからどうするかもじっくり決めたいので・・・」
「・・・分かった、お前の気持ちは。今の話も加味した上でアッシュとの話し合いに向かうとしよう。ではな」
「ありがとうございます、陛下・・・」
それで話はまとまったとピオニーが退出を口にするが、ルークからの報告とこうしたいとの欲求を口にされてその気持ちを受け取ってから退出する。その背にルークの切なる想いを受けながら。









・・・それで次にアッシュの部屋を訪れ話をしたピオニーはさっさと自身の部屋に戻るのだが・・・
「・・・改めて、酷いな・・・俺も出来ることならアッシュより、ルークにこの地位を継いでもらいたいと思えた・・・そんなことなど最早望まれるもんじゃないのは今の立場にあの二人の考えを聞いたから出来ないのは分かるが、アッシュがルークへの気持ちを一片も取り繕う事さえ考えようともしないのはあまりにも酷すぎる・・・あれがルーク限定だという保証など誰がしてくれるというんだ・・・」
・・・そこで自身の部屋にある椅子に座りながら先程のやり取りを思い出し、ピオニーは苦い顔を浮かべていた。あまりにもストレートであり、ルークに対する敵意を隠そうともしなかったアッシュの姿に。
「・・・だがあれだけ素直に、それでいて激しい気持ちを持っているのなら貴族達へあいつの実態を見せるにはちょうどいい・・・と言ってはなんだが、そういうことには間違いはない。明日にはうまく事が進むだろうな・・・本来あってはならんことだがな」
しかしと考えを切り替えるピオニーはうまく行くと確信はするものの、やはり気持ちは良くないものだと口にする。決して誉められたことをしていないアッシュの事を逆の形で信頼するという、本当はあってはならない事を計算に入れることに。


















・・・それで翌日、ピオニーはルークとアッシュの二人に主だった貴族達を謁見の間に集めて話をした。いかに二人の仲と言うよりは、アッシュがルークについてを忌み嫌っているのかを本人から言わせ聞かせられる形で。

・・・その際にアッシュがルークに対して放った暴言の数々に一切周りを気にしない強気の態度は、大いに貴族達を引かせてしまった。これほどのものかと甘く見ていたり、全く問題視していなかった者達の表情を一気に青くしてしまう程にだ。

そんなアッシュの気持ちを盛大に吐き出させたピオニーはルークとは別々に二人を退出させ、これで二人が一緒にいることの難しさもそうだが下手にルークをアッシュの代わりに次期王にさせる方が危ないとも貴族達に言ってのけた。そんなことをすればアッシュがルークを相手に猛抗議だけならまだしも、誰かの後押しや甘言があればクーデターを起こすといった事態も有り得てしまい、とてもこれからのライマの安寧の為には勧められる事ではないと。

そのピオニーの言葉に、貴族達は苦渋の表情を浮かべながらも反対の言葉など出てくることは無かった・・・やはりと言うべきかアッシュの姿を見て大丈夫などと言えなかったこともあるだろうが、それ以上に具体的な打開策がなければどうしようもないことに加えてその案があるなら実際にお前がやってみろ・・・と言われる可能性が高いことを考慮してだろう。

そんな貴族達に反対意見があるなら数日時間を与えてまた集めるからその時に言えと言ってピオニーはその場を解散させたのだが、その数日後に再び集められた貴族達が出した答えは沈黙・・・であった。あれだけの姿を見せられた貴族達が出した答えは。









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