認知し、認知出来ないが故の距離

・・・それが昨日に起こった出来事の顛末、という訳である。ちなみにティアは夜になり皆の元に戻ってきたのだが、あくまで寝るために戻ってきたのであって機嫌自体は直らずイライラとしたまま過ごしていた。それで皆が起きたら起きたで再び機嫌を悪くしたまま神託の盾の包囲の解けたセントビナーから出てきたという訳である。



「・・・ま、何にせよ一回謡将に事実の程を確かめた方がいいんじゃないのか?」
「ユーリさん・・・」
・・・昨日の事について会話していたイオン達の元に、ユーリが密かに近付き会話に加わる。話をヴァンにさせるべきと。
「あの姉ちゃんがあんなに機嫌が悪くなってんのはそんなつもりはなかったで、勝手に人を悪者にすんなって思ってるからだろ。このまんまその事に触れないまま終わらせようとしたらずっと機嫌の悪いままだと思うぜ。はっきりしないままならな」
「・・・だからヴァンにはっきり聞けと言うんですか?」
「言っちゃなんだがあの姉ちゃんは免罪符を求めてんだろ。自分は悪くないってな。それがはっきりどうなのか分かったなら少なくともあんなイライラしてる状態はなくなると思うぜ」
「・・・悪くなかったなら僕もいいとは思いますが、そうでなかったらどうなるんですかティアは?」
そのままそうするべきと思った根拠を語るユーリだが、イオンはティアの望む答えではなかったら?と告げられなかったマイナスの可能性について聞く。その声にユーリは関心の見えない表情で首を横に向ける。
「さぁな?昨日も言ったが人の家に襲い掛かって入り込むのは普通に悪いことだろ。それでそんなつもりはないって悪びれない奴の気持ちなんか分からねぇよ、俺は」
「っ・・・そう、ですか・・・」
そしてユーリから返ってきた辛辣な声にイオンは反論出来ず、曖昧にしか返せなかった。端で聞いてたアニスにガイも微妙に表情を歪めるだけである・・・言ってしまえば悪いことをしたのに過ちを認めないティアが悪いと、単純ながら明確に道理に則られたユーリの言葉は正しい物であったために。












・・・そんなティアの孤立化が強まっていく一行だが、歩む道程に特に障害があるわけではない。故に一行は誰憚られることなくフーブラス河へと辿り着く事になった。



(・・・おかしいわね、アリエッタがそろそろ来る頃だと思うのだけれど・・・)
道を知っているだけに迷いはしない。そうティアはフーブラス河についたことで少しは怒りから考えを向けて考えていたが以前アリエッタが襲い掛かってきた場に来ても全くその気配も何もない。その事に怒りを半分以上消し去ってしまわせながら、内心首を傾げていた。
(確かあの時はイオン様を取り返しに来たと言って、クイーンについても恨み言を言っていた・・・もしかしてクイーンが生きているからこっちに来てないのかしら?イオン様への気持ちはともかくとしても、クイーンが生きてるならアリエッタもこちらにこだわる理由はないでしょうし・・・)
それでその理由について推測するティアはクイーンが原因との考えに至る。
(まぁいいわ、それならそれで。問題はルークと早く合流したいのだけれど、カイツールで待っているはずがないわね・・・わがままな時のルークじゃあ・・・)
そんなアリエッタに対する推測はもうどうでもいいとティアは脇にやり、代わりにルークに対する考えを向けるが・・・その考えはわがままで無知なルークをルークと認めないと、否定する物であった・・・















・・・さて、そのようにティアからろくでもない考えを向けられているルーク達はカイツールの軍港へと辿り着いていた。










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