if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 前編

「・・・とりあえずナタリアについては以上にするし話も終わりにしようと思うが、まだ何か聞きたいことはあるか?」
「では最後に一つ・・・ちゃんとした形の命令を私に出さないのは、私に対する遠慮か配慮なのですか?」
「・・・そういった考えが全くないとは言わん。だがそれ以上に今となっては思う・・・お前は俺ほどにルークの事をどうにかしたいという気持ちに考えを持てはしない。そんなお前を無理に巻き込むつもりはない」
「・・・そういうことですか・・・」
パッと聞くだけなら突き放した物言いであるが、幼馴染みだからこそ言える言葉・・・その性格に考えを読んだピオニーの言葉にジェイドは表情を崩しはしないものの、声色には僅かに複雑だという震えが入っていた。
「・・・最後の質問には答えてやった。もう何もないと言うなら元に戻れ」
「・・・はい、では失礼します」
ピオニーはそれで終わりなら出るようにと言い、ジェイドは頷き部屋を後にしていく。



「・・・ジェイドからすれば配慮があったとはいえ、あぁいった言い方はプライドを刺激されるということか・・・例えるルークに対しての気持ちが奮わんのは事実とは言え、自分の考えを読まれた上で頼りにされんというのは」
それで一人になった場でピオニーはそっと言葉を漏らす。ジェイドの心の動きに関して気付いていたといったように。
「だがそれでも自分も何かを、と言わんような奴を協力させる訳にもいかんからな・・・それだけアッシュとルークの間で根付く問題に関しては厄介な物で、乗り気ではないジェイドに役に立つからと協力させたところでやる気も出ないだろうしな」
だからこそそんなジェイドに無理矢理を求めないとするとピオニーは決めたのだ。この問題は決して簡単なことではないため、やることはやるだろうが決してやる気を出して率先した行動を取りはしないだろうジェイドに以降も頼らない方がいいと判断して。


















・・・それでジェイドが訪れて以降、何度か貴族がルーク様を元に戻してはくれないかと懇願しに来たがピオニーはそれらの意見を受け入れることはなかった。

それで次第にその意見は出てくることはなくなっていったのだが、それはピオニーが頑なで揺るぐことがない態度を取った事だけが理由ではなく・・・目に見えてアッシュの機嫌が良くなっていったことだ。

一時はルークがいなくなったことに関して話題を振られるだけでアッシュは度々キレていた、あの屑の事を一々言うなと。その為にどうにか兄としての立場からなんとかピオニーに取り次いでもらおうと考え動いていた貴族達はアッシュに取り次ぎを願うことはなくなり、そこからアッシュの機嫌が良くなっていき穏やかとは言わずとも厳格な振る舞いを見せるようになっていった。

そんなアッシュの姿からまた下手にルークを戻して喧嘩をさせるようなことをすれば元の木阿弥になりかねないと考えられたこともあるが、それ以上にアッシュが良い方に変わったのだからこれでいいだろう・・・という空気が貴族間で蔓延しているのが大きな理由であった。

無論、今でもルークを支持しようと考えている貴族達としてはそんな状況は面白くないと思っている・・・だがそれで何の考えもなしにルークを戻すことに成功した所でアッシュとの仲をどうにか出来なければ、下手をすれば前以上に二人の仲に関しての状況が悪くなるばかりかピオニーに目をつけられ、貴族としての地位すら危ぶまれる事態に陥ることも有り得る・・・そういった危険性も有り得ると見ている為、現在の状況は表向きは静かな物へとなっていた。









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