認知し、認知出来ないが故の距離

「・・・ねぇヒューバート。ガイさんは本当に何も言われてないのかな?」
「個人的な予想では使用人であるガイさんにはそういった話はされてないのではと思います。立場的には使用人は国の決定に際する事は出来ませんし、腕が立つとは言えやはり使用人という立場になりますからそこまでの事は伝えるべきではないと普通なら立場を鑑みると思いますよ」
「「・・・っ!」」
だがカロルの疑問の声にヒューバートが周りに聞こえるように告げた丁寧な返答にガイとティアの表情が一気に曇った。単に知らされてないだけではとの考えに。
「でも実際そうなんじゃないの?ガイと話した感じだと、ティアに感情移入して話をするかもしれない感じもするし」
「・・・そうでないにしても、ファブレと言わずとも人の家に侵入しておいて悪びれもしないのは俺としてはどうかと思う。ガイと話をしてそういった素振りが見えなかったのはな」
「・・・っ!」
更にルーティも同意した後にユージーンがだめ押しとばかりにその行動の有り得なさに呆れると、言われっぱなしの状況に一気にカッとティアは怒りに表情を染め・・・



‘・・・ガチャバタンッ!’



・・・いきなり走り出し扉を開けて部屋を出ていった。
「・・・あ~、びっくりした~・・・いきなりどうしたんですか、ティアは・・・?」
「大方今の話を聞いてて居たたまれなくなったんじゃねぇのか?自分の事を悪く言われてるような事ばっかりだったしな」
場にいた一同の気持ちを代弁するかのようアニスが目を見開きながら声を漏らす中、ユーリがティアの突然の奇行について推測を述べる。
「・・・今の話をしない方がよかったのかな、俺は・・・?」
「いえ、僕は話さなければいけなかったと思います。あの様子だとティアは自分は悪くないと思っていたのではと思いますし、事情を説明されるのを避けていたのは単に自分が悪く見られるような事を嫌がってたんじゃないかなと思うし・・・」
「だろうな。それに俺には国の考えてる事なんか興味はないが、人の家に襲い掛かって入り込むのが悪いことってくらいは十分にわかる。そんなことを黙らせようとするってのはまた悪質だってこともな」
「「う・・・」」
ガイがそんな中で気まずげに声を上げるがクレスにユーリの至極全うな推測と一般論に、イオンも共に苦い声を上げる。
「・・・思ったのだがどうしてガイは簡単にティアと意気投合してこちらに来たんだ?ファブレを襲ったという事実を考えればあまりティアの立場は歓迎出来る物ではないと思うが・・・」
「いや、それは・・・謡将から妹も頼むと言われたし、ここに来る前に会った時に友好的だったから別に警戒しなくてもいいんじゃないかと思って・・・」
「だから特に何も思うことなく、というわけか・・・」
今度はユージーンが何故すぐに仲良くなったかと問うが、ガイが気まずげに警戒など考えてなかったと漏らす姿に呆れ気味に声を上げる。
「ま、これ以上この話をしても仕方ないと思うしこの辺りで止めとかない?多分ここで色々話したって水掛け論で終わるだけだと思うし、あんな調子じゃあるけどあの子は私達って言うか導師一行から離れる気はないと思うから、そろそろ止めとかないと導師も気まずさが強くなるだけだと思うしね~」
「っ・・・お気遣いありがとうございます・・・」
ルーティがそんな場に区切りをつけるよう気楽そうに話をやめることを切り出すが、さりげに最後に自身に向けられた言葉にイオンは礼を言うが表情を暗くする。その言葉がティアについて話はせずとも導師としてもっとちゃんと考えるべきと、そう言っているように感じさせられたために。











「一体なんなのよ、あの人達は・・・あんな人達に私の気持ちがわかるわけないじゃない、世界もルークも救おうとしている私の気持ちが・・・!」
一方ティアはまた一人ソイルの木の上に登り、やり場のない感情を先程よりも強く浮かべて恨みがましく漏らしていた。自分の事・・・自分が背負う物の重さなどわかるはずもないと怒り、別人と見紛う程厳めしく表情を歪める形で。



・・・だがティアは知らないし、振り返ろうとも考えない。以前自分が抱えていたこと、それらを全て自分のみで解決しようとしたが故に早々と解決出来ただろう事をよりこじれた事態にしてしまったという事実を・・・今の自分に出来ることはなんなのか、それらを全く把握しないばかりか過信までしているために事態はティアの思うような所からもう大いに外れだしている事を・・・










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