if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 前編

・・・そうしてジェイドを巻き込まないと決めてからのピオニーの内密でありながらの行動は早かった。ルークの居場所について自身の信頼出来る者達を集めて整え、数日後にはこれで大丈夫だとルークを送り出せるくらいに。

そしてその後にピオニーはルークに関して決めたことを貴族一同に加え、アッシュとナタリアの前でも発表した。表向きは皇帝としての毅然とした態度で、ルークについて決めたことを私心などなく最善は何かと考えて決めたといったようにだ。

その時はやはりというべきか、場は大荒れとなった。何故自分達に相談もなくそんなことをしたのか、インゴベルト陛下達に申し訳はないと思わなかったのか、今すぐにルーク様をこちらに戻すべきだと。

・・・だがピオニーがそうしてギャアギャアと騒ぐ一同を前にして「ならアッシュとルークの不仲を血を見ぬよう、完璧と呼べるような形で穏便に解決してみろ。それが出来ると言った上でこうすれば解決出来ると説明してもらい、それが納得出来る物なら俺も一考しよう」・・・と言った途端、何か言いたげに唸るばかりの状態になる者が続出して反論の声は一気に静寂へと変貌してしまった。この辺りはアッシュのルークに対する激しさを少なからず貴族達も見てきたことにより、単なる子どもが一時の感情を向けているだけのような物ではないと感じたからであろう。

ともあれその一言により沈黙してしまった一同は何か案があるなら俺の所に来てそれを言えばいいと言った上で場を解散とし、退出する貴族達を見送った。笑顔というには攻撃的な含みが存分に入っているアッシュと、対照的に悲しみに伏せるような表情を浮かべるナタリアの様子も確認しながら・・・









「・・・何の用かと問う気にもならんが、一応は確認しよう。ルークの件で訪ねてきたんだな」
「えぇ、その通りです。貴方の発表と決定のおかげで、大分私にそのしわ寄せが来たのですよ。陛下は何を考えておられるのか、お前も何か聞いているのだろう・・・何故陛下はそのようなことをいきなりしたのかと言った涙声を向けられる形でです」
「成程・・・最初二つは貴族からだろうが、最後はナタリアの言葉か」
・・・それでその翌日。自室を訪れたジェイドに分かっているといったように用向きを問うと、貴族達の言葉を紡いでいく中で明らかにニュアンスの違う言葉にピオニーも感付く。それがナタリアからの言葉だと。
「そう気付かれたのであれば話は早いのですが、何故いきなりそのような事を決められたのですか?貴族の言葉がしつこいこともそうですが、今のまま何もしなければまず間違いなく相応の期間はナタリアの気持ちが復活しないのですが・・・」
「悪いが、それについて理由を答えてやる気はない。お前からすれば貴族達の言葉にナタリアの現状はどうにかしたくてたまらんのだろうが、その理由に関してを話した所で理解は得られんだろうしむしろ反発が起きる未来しか想像出来んからな。だから貴族達に何か聞かれたら自分も門前払いにされて、それでも理由を聞きたいなら俺の所に直接来いと言っていたと伝えろ・・・ナタリアに関してはすまんが、落ち着くまではちゃんと様子を見てやってくれ。俺が何かを言っても下手な慰めにもならんだろうし、理由を言ったところで同じような結末になるのは目に見えている」
「・・・と言うことは、少なくともナタリアが聞けば悲しむようなことが理由だと言うことですか」
「それ以上言うつもりはないし、お前の中にある推測についてもナタリアに限らず誰にも言うな。推測でもそれを口にすれば面倒にしかならんのは目に見えているし、お前も勘付いていたなら俺を止めるように尽力するべきだったろうと批難されかねんからな」
「・・・分かりました。そういうことなら私は何も知らないで通させていただきます」
ジェイドはそこから真意を聞きたいというように声を向けるのだが、決して言わないとした上で下手に行動しない方がいいといったように含めると理解を示したと頭を下げた。下手に何かをすることはしないと。









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