if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 前編

「不憫なもんだ・・・せめて年の離れて見た目の似てない兄弟だったなら、まだアッシュも自重出来ていただろう。だが出来が良かったからか、それとも出来が良くなくても関係無くか・・・アッシュは全くルークに対する思いやりなど見せることなく、強く当たり続けた。それがルークを追い詰め、あんな決断を下させた・・・なまじルークが聡明だったことが不幸だったのかとも思うが、聡明でなかったなら待っていたのは喧嘩からの権力争いへの発展という展開だろうな・・・本人達が望むが望むまいが・・・」
そのままルークに対する同情とアッシュへのどことないやるせなさを滲ませながら、もしもの事についての推測をピオニーは口にしていく。



・・・ルークが歳に似合わない聡明さに能力を持っていることに関しては、一時期ピオニーは疑問に思っていた。貴族に王族としての教育が良かったからというにはどこか説明出来ない部分があると感じたのもあるが、アッシュと対比するとあまりにも出来に差があると感じたからだ。

だがそれも次第に別のこと・・・アッシュの十にも満たない子どもにしてはやけに激しすぎるルークへの敵意が見える行動に対して、何故と思うようになっていった。

インゴベルトにファブレ夫妻が生きている頃はあまり二人に関わることのなかったピオニーだが、それでも遠目から見ても仲が悪かったことに関しては覚えている。それもアッシュが一方的にルークを敵視して行動していたことも。

そんな光景を何度も見た上でインゴベルト達が亡くなり、二人の身元引き請け人のような立場になったピオニーはアッシュが自身をなめたような態度を取っている事もあり、自然とルークの方に感情が移入するようになっていった。それこそもうアッシュの事で思い煩うことなく、悲嘆に暮れるような事になってほしくないと思うくらいには。



「・・・さて、気を取り直してルークには早く俺の暮らしていた所に移るようにとの手続きを済ませねばならんな・・・だがジェイドにも手伝ってもらう、か?いつもならあいつを巻き込むことに異義はないが・・・」
それで続けて行動をしようと口にする中で、ピオニーは幼馴染みの名を呟きどうするかと考え込む。普段なら一も二もなく使うというか、協力してもらう相手だが・・・
「・・・やっぱりジェイドに協力してもらうのは無しだな。今のあいつの立場はナタリアの護衛兼教育係だ。下手にルークの事に巻き込めば、その分あいつにしわ寄せが来るだろう・・・まぁ俺がルークの事をこうしたと言えばどのみちアッシュに当たられ、ナタリアには悲痛な声を向けられ俺にどういうことかと聞きに来るだろうが・・・あいつを巻き込まんようにするにはこの件に関しては俺の思惑の中にはない。そう認識させた方がいいだろうな」
少し考えて出した結論は今回は協力もそうだが、命令は下さないという物だった。今のジェイドの立場上、あまり協力してもらうには色々と面倒になるからと。



・・・今回のルークの件で、ピオニーは自身に批難の声が向けられることを覚悟している。前王であるインゴベルト達から預かった二人であり、王位継承権を持ちまだアッシュが確実に王位を継ぐと確定していないのにルークの王位継承権を独断で外すという事をするためにだ。

勿論それでいいと言う貴族もいるだろうが、前王のインゴベルト時代に決めたことを引っくり返すなどといった名目で批難する者はどうしても多く出ることは避けられないのはピオニーも分かっている。様々な思惑が絡み合うからこそ、ピオニー相手でも批難するべきだと言いに来る形でだ。

それに個人的な規模から見てもアッシュは初めこそはルークがそうなったことに喜びはするだろうが、ナタリアがその事で悲しんだとなれば教育係のジェイドにとばっちりのような形で文句を向けてくるだろう。そこでジェイドがピオニーからの命を受けて考えを聞いているとなれば、また余計な事態になるのは避けられない。

そんな状態で敢えてジェイドを巻き込むくらいなら、自分は黙っておいて一人でその批難を受けた方がいい・・・そうピオニーは考えたのだ。アッシュとナタリアもそうだが貴族達からの厳しい目を向けさせるのを避けるため、例えジェイドが何かを察したとしても自分が何かを命令しているのでなければ必要以上にジェイドを責める理由はない・・・と。









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