if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 前編

「・・・無論そうなるとは限らんが、だからと言ってそういった事になったなら俺としても目覚めが悪いし軟禁のような形でお前をそこに縛り付けるつもりもない。そしてお前がいなくなってもそこにいる奴に異常だと報告させるつもりもない・・・自由に生きろ、ルーク」
「い、いいんですか・・・本当に俺の為にそこまで言ったり、してしまうなんて・・・!?」
「言ったろう、このまま悪い方向に行けばお前の身が危ぶまれると。それに兄に嫌われているから色々と避けて逃げるためだけというのが本当の理由でないのは分かっている・・・兄の為、自分が身を引いて悪評を集めることが狙いでもあることはな」
「っ!?」
ピオニーはそこから優しげな笑みを浮かべた上でその真の狙いについてを口にすると、ルークは驚愕に表情を歪めた。何故それが知られたのかというように。
「・・・お前は隠していたつもりなんだろう。そういったように見せないようにしてアッシュの事をいい方向で皆に見てもらいたいと考え。そして実際に王位継承権の放棄を発表すれば、大抵の者はお前に対する印象を悪くするだろう・・・だがお前の事をよく見ていた俺から言えば、そういった風に見られることが目的であることは察することが出来た」
「そんな、ことは・・・」
「いや、肯定も否定も返さなくていい。これはあくまで俺が勝手に感じたことだし、王位継承権の事に居場所に関しても俺が勝手にやることだ・・・今言ったことが例え事実だとしても、さも美談のように語った所でアッシュの機嫌が良くなる訳でもないだろうし貴族達がそれでなら大丈夫だと意見を翻す訳でもない。むしろ王族だからこそ苦難に立ち向かい、凛とした立ち居振舞いをするべきだと言葉こそ飾りはするが叱咤の声を向けてくるだろう。理解を得られん事は世の中にはいくらでもあるし、自分の理想通りにいかせようとする奴らとの折り合いがつかんのなどよくあることだ」
「・・・それでも、陛下は勝手にやると?」
「あぁ。お前の気持ちにそれを掬い取った俺の判断は色々と言われるだろう。だがそうしなければお前の命が危ないというのであれば、俺はそうすることを厭わん・・・だからお前ももう勝手にしろ。ライマの者達やアッシュの事が嫌いだというわけではないだろうが、今のままアッシュに対する引け目を抱えて生きていくだけじゃあ不憫な生き方しか出来んだろう。だから好きな時に俺の用意した場所から出ていって構わんし、帰りたいと思ったならいつでも帰れるようにはしておいてやるし誤魔化しくらいいくらでもしてやる・・・だから自由に生きろ。そう出来るようにするのが、アッシュの為に身を引くと決めたお前に対する俺からの報いだ」
「・・・陛下、ありがとうございます。しばらくはそこで暮らしますので、自分がどうするのかを決めたいと思います。これから自分がどう生きるかを・・・」
そんな姿に優しく、だが確かに自分の考えを強く理屈付けて話すピオニー・・・その話が真剣で真摯であったこともあるが、その中身を受けてルークも覚悟を決めたように頭を下げた。アッシュ達とは関係無く自分の意志で生きると・・・









「・・・ふぅ・・・」
・・・それでしばらくしたら人をやるからそれまで待つようにと言ってルークを部屋から出した後、ピオニーは一人になった部屋で複雑そうにタメ息を吐いた。









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