if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 前編

・・・ルークは意外にと言うよりは知識としては知ってはいても自分達には当てはまらないと感じていたのだが、世継ぎ問題というのはそうそう簡単な物ではないのだ。

インゴベルトからピオニーに移る際は他に適材な人物がいなかったからすんなりといったが、ルークとアッシュに関しては二人の立場が双子というあまりに近い立場の上で性格や思考が全く違うことが対立の図式を生んでいる。

現状としてはアッシュが次の王位継承権は高いが、能力に人格の面から見ればルークに軍配が上がる。しかしそれならルークが上の立場に立てばいいではないか、と全員が全員ならないのが政治・・・もっと言うなら政治家に貴族というものだ。

こういった有力候補の対立に付き物になるのが、勝者の側の人物に立って主だった敗者側の人物より上に立とうという欲が見えてくることだ。勿論忠義であったり伝統を守ろうとして動く者もいるだろうが、そういった人物に紛れ込む形で行動する者は多数出てくる。これは自分達一派だけが大っぴらに行動して反感を買うのではなく、周りもさりげに誘導する形で行動させることで自分達への責任追及を避けると共に、他の面々に対して自分達の意見は無視できない物として見せる為の常套手段だ。

だからこそそういった人物が集まり出せば、この問題は更に面倒な事になり大事になっていく・・・その為にピオニーは決断したのである。



「・・・だから俺はお前の申し出に関してを了承することにしたんだ。王位継承権を放棄したいとルークが言い出し、それを俺が受理したとなれば流石にそういった奴らも諦めきれはしないだろうが、俺相手に不満を堂々と言えるやつはまず出てこないだろうからな」
「でもそれだと、陛下は不満を向けられる事になるんじゃ・・・」
「不満自体は然程問題じゃないし、覚悟の上だ。それにそれくらいしなければお前達に二人の問題に関して解決しないだろうし、下手に貴族達の意地が絡んできたなら余計に面倒な事になりかねん。それこそ誰かの入れ知恵なり口添えなんかをされる形でアッシュがルークの事を打倒しようと躍起になり、権力争いが加熱しかねん形でだ・・・そうなれば後々になればなるほどその争いを止めるための時間に労力がかかるのもそうだが、何よりアッシュが負けた場合が厄介としか言いようがなくなるだろう・・・あいつがルークに負けるという結末を素直に受け止めるとはとても思えんし、そうなれば後は泥沼だ。俺が在位している間は王位継承権の正当な持ち主はどちらだという論争に争いは絶え間なく起こるだろうし、俺が退位か死んだ後も良くない感情が渦巻くだろうことも想像に難くはない光景が目に浮かぶからな」
「っ・・・だから陛下は、俺が王位継承権の放棄をする方向にしようと考えたんですか・・・そんなことにならないようにするために・・・」
いかにピオニーは自身で考え、どうするべきかとの結論を出したか・・・壮大でいて凄絶な可能性についてを語ったその中身に、ルークも緊迫したように納得する。どれだけの危険性があるのかを感じ取って。
「そうなるが・・・こう考えざるを得なかったのは、アッシュのあそこまでのルークに対しての敵対心を見てきたからだ。王位を巡って兄弟間で血で血を洗うような争いは歴史を見ても珍しくないとは言わんが、確かに存在していたのも事実・・・そして今のアッシュの状態は10という年齢から将来変わるという可能性を考えても、あまりいい予感がしない。このまま変わらないどころかあの激しさがより酷いことになったと想像すると、それこそ兄弟間で血で血を洗う争いが起こることも有り得る・・・という可能性を危惧するくらいにな」
「っ!」
ただそう考えた大本はアッシュの激しさを将来的に危惧してだというピオニーに、ルークは盛大に悲痛に表情を歪めた・・・アッシュはそんなことしないと否定したいが決して否定が出来ないと、今までとオールドラントの姿を見てきた事から感じてしまった為に。









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