if〜もしもルークの転移したルミナシアのファブレ兄弟の立ち位置が逆だったら 前編

・・・本来であればルミナシアのルークとアッシュの関係は兄がルークで、アッシュが弟と言う立場にあった。

その立場からルークはアッシュにより因縁をつけられて決して仲の良くない兄弟だと当人達に周りの面々は認識してきたが、その立場が逆になればどうなるか?そしてそこに本来の物語に入らず、その世界に入り込んだルークがどう感じて生きていくのか?・・・これはそんな話である。


















「・・・決意は変わらんのか?」
「はい・・・ですので以前申し上げたよう、俺から王位継承権を無くした上でアッシュの近くにはいないように配属をお願いします」
「答えは変わらんか・・・分かった。そうしよう」
・・・アッシュとルークの二人が十歳の誕生日を迎えた翌日の事。ルークはライマの現皇帝であるピオニーの私室を訪れ、自身の気持ちについて揺るぎない事を再度示していた。
王位継承権の放棄と兄であるアッシュと離れる事を強く望む幼いその姿に、ピオニーは仕方無いと頷く様子を見せる。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありません・・・」
「いや、こちらの力不足もあるが何よりアッシュ当人があれだけお前を拒絶する姿を見てくれば嫌でもどうにかせねばならんとは考える・・・例えきっかけが前王のインゴベルト陛下にファブレ夫妻の急死にあったとしても、あのアッシュの態度は酷いと言わざるを得んからな・・・」
「っ・・・!」
ルークは小さな体で精一杯に謝罪するように頭を下げるが、多大な実感の中にアッシュの厄介さについてを漏らすピオニーに下げた頭で正面から見えない事もあって盛大に辛そうに表情を歪めた。



・・・オールドラントからこのルミナシアという異世界の同一存在の『ルーク』の体に入ったルークは、様々な違いこそあれどアッシュと兄弟という立場になったことには喜びがあった。これで自分とアッシュは恨みあうことなどなく、仲良くいけるのではとナタリアがアッシュの婚約相手であったのを後に知ったのもあってだ。

それでルークは今生では兄であるアッシュが王位を継ぐのが妥当だと考えたのもあるが、前世ではレプリカという立場があって見た目にそぐわない知識や経験の不足であったりで色々苦労してきた為、幼い頃から様々な勉強であったり剣の腕の鍛練などを積極的に行ってきた。自分がアッシュを支えると共に、色々と知ることへの欲求も強くなっていった為に。

ただそうしてルークが努力を重ねていったのだが、こちらのアッシュはオールドラントの時と同じようにルークの事を毛嫌いするようになっていった。その事について何故と思う部分もあったが、こちらでもそうなのか・・・という落胆に近い気持ちも大きくあった。

しかしそれを見かねたこちらのファブレ夫妻にインゴベルトが人前での態度の矯正をさせようと厳しい目をアッシュに向けていたことから一時はその目に態度もどうにか抑えられていたのだが、ピオニーが言ったようにこの三人が近い時期で急逝した事がアッシュの態度が一気に変わってしまった一因となってしまった。



「それにアッシュはあの三人と違い遠縁になるからか、俺の事を単純に嫌ってるからか・・・とにかくアッシュは俺の言うことに関してをあまり重要視してくれん。皇帝になって日が浅いからというのもあるのかもしれんが、どちらにせよあまり俺の言うことは聞かんだろうからな・・・例え厳重に注意しても、ルークの事に関してはな」
「陛下・・・」
それで自分の立場と力不足に嘆く様子を浮かべるピオニーに、ルークは何も言えなかった。自分の事で苦心していることもあるが・・・何よりピオニーがアッシュに尊敬されていないのは、ルークにも感じ取れていた為に。









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