焔と預言の世界の行く末

・・・これに関してはユリアシティの閉鎖的な環境で性教育と言うか、まともな異性との接し方を教えることが出来なかったのが大きいだろう。場所が場所なだけに人の数自体が少なかったこともある上、下手にユリアシティの事を知る人物を増やすように外部から人を招き入れる事が望まれないために恋愛結婚の形はまず起きることがなく、上の方から誰と誰が結婚するという風に決めるのが通例だったが為に普通の恋愛のし方など誰かが教えれる立場になかったのだ。

そういった背景もあってティアの中の恋愛と言う物に、性的な要素というものが大きかったことだろう。無論アドリビトムの女性陣の中でも上の方に入るスタイルの良さであったティアは恋愛感情などない性的な目を向けられることの意味という物に関しては知ってはいただろうが、そういった性を見るような目を向けられることが一層そんな考えを助長させた一因でもあったと言える。嫌らしい目を向けるような相手を好きになれるはずがないと。



・・・そういった潔癖な考えというものは持たない方がいいというような物ではない。ただそんな考えに囚われて思考が止まり、自分の考えだけ・・・かつての思い出をよすがに言葉だけで自分の思い通りに事を進ませようとした。

だが言葉だけで物事を進めようとするのは余程言葉選びにボキャブラリーのある物でなければ言葉足らずになるか、もしくは自分の思うように言葉が出ないことに苛立ちを覚える事になるのが大抵のオチになる。その点では自分の中で全てを終わらせ済ませたいという考えで思考に縛りを入れてしまった事もあるが、元々からボキャブラリー豊富な人物ではないティアが困窮に落ちるのも当然の結果と言えた。

そしてそんな状況に苦しみ、結局は誰にも何も言わずに全てを抱え込んでジュディスの手により死に絶えたティアであるが・・・一度でもルーク達の事を信じて事実を明かすこともそうだが、本当に長い間ルークの事を想っていたならばこそ性的な関係に至ることを考えることが状況打開の為の確かな道筋となったことだろう。本当にルークの事を好きだからこそ体を重ねたい、その想いがいかに強いかを理解してもらう為にもだ。



・・・だが旅の間にティアはそんなことを考えることなど一度たりとて、頭に過ることすら無かった。その上で自分の考えについてを隠し、ただ自分の思うような展開にしたいという気持ちだけを乗せた言葉で全てを進めようとしてきた。

もしティアがルークとそんな関係になるというか、断られたとしてもアプローチだけでもしていたならルークもどうするべきかという迷いを抱いたことだろう。ティアの事を放っておけるか、あれだけの気持ちを見て見ぬフリをしてルミナシアに戻っていいのかと。

これに関してはティアが男女の認識の仕方の違いもそうだが、ルークの考え方がどういうものであるかを理解していなかったのが大きかった。一般的な了見に知識を持つ男からすれば相手側から性行為を求める女性というのは自分を認めてくれた証のような物といったように考えられる上、それが初めてだというなら尚更である。

それでもろくでもない男ならそんな風に思いはしないかもしれないが、ルークの人間性を考えれば例え髪を切る前でも切った後でもまず無責任な考えになる方が有り得ないと言えただろう。



・・・もしティアが性的な行為に対して抵抗意識を持たないように成長し、ルークなら自分の気持ちと共に自身を受け止めてくれると考えることが出来ていたなら結果は違っていた可能性も少なからず有り得たとゼロスは見ている。しかしそう出来なかったからこそ、今があるともまた認識している。そしてルークが自身の中で結構なウェイトを占めている存在だと思っているからこそ、最早ティアに対して同情など浮かぶことなどゼロスには無かった。もう会うこともない存在と認識している相手に。









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