認知し、認知出来ないが故の距離

・・・ルークにアドリビトムの面々が互いの事を打ち明けることになった夜から一夜明けた。












「おはようございますですのご主人様!」
「・・・くぁ~、もうちょっと声の量落とせ・・・くるんだよ、結構頭に・・・」
「ごめんなさいですの・・・」
休憩所から出た一同の中で唯一何も知らないで就寝していた足元のミュウが元気よく挨拶する中、ルークは素を全く伺わせる様子もなく不機嫌そうに声を返せば申し訳なさそうにシュンとなる。
「・・・」
「・・・あ~、ちょっと眠気覚ましに少し歩いてくる。お前はこいつらと待ってろよ」
「はいですの」
「私も付いていっていいかしら?」
「・・・しゃあねぇな、勝手にしろよ」
そんな時にジュディスから意味深な視線を向けられた事にルークは場から離れると共にミュウに残るように言い、ミュウが頷いた後にジュディスが自分もと言い出したことにめんどくさげにさっさと歩き出す。






・・・それでルークとジュディスは人気のない場へと来た所で足を止める。
「・・・素は出さないのかしら?」
「・・・あ~、ミュウがいるからちょっと無理だ」
そこで早速とジュディスがここに呼び出した訳について聞くと、ルークは空気を素に戻し頭をかきながら答える。
「皆はミュウとそう付き合いがないから分からないかもしれないけど、今の俺と素の俺と使い分けをしてたら不意に言うかもしれないんだよ。何かふとした発言から素の俺の事をな」
「そう?あの子は素直だから言いそうにないと思うのだけれど」
「素直っていうか素直すぎるんだよ・・・『ご主人様が演技していることは内緒なんですの!だから言わないですの!』くらいは俺のことで誰かに指摘されたらそう言う事は有り得るってくらいな」
「・・・あぁ。そこまでのレベルだということね」
その訳のミュウの事についてルークは苦笑い気味に語ると、ジュディスも最初は疑っていたが似たように苦笑を浮かべる・・・ミュウの素直さは美徳ではあるが、素直過ぎる事が今の状況では絶対良いことではないために。
「まぁそういうわけだからミュウもティア達もいない場所じゃないと素を出すつもりはないから勘弁な。それとこんな風に何度も単独行動をすると不自然だし、特に大事な事が無いならあんまり呼び出しもしないでくれ」
「・・・分かったわ。ただこれは先に聞かせてほしいのだけれど、これから貴方は素を出す気はあるのかしら?私達の前では別にしても、ミュウにティア達の前で・・・」
「・・・難しい質問だな・・・」
理解した様子を見てルークが素は出さないと言うと、了承しつつもジュディスが向けてきた問いかけに眉を寄せて首をひねる。
「・・・正直な所だとミュウになら素を出した状態で接してもいいかなとは思ってる。けどティア達に関しては・・・多分素を出すような事は自分からはないと思う」
「・・・どうしてかしら?」
「・・・これからの事があるからだよ。以前だったら俺はその・・・アクゼリュスの事があってから皆とマシに接する事が出来るようになったんだけど、今回俺はまたアクゼリュスを落とすなんてことは絶対にしたくない・・・だからっていうかこういう言い方はおかしいと思うけど、俺が変わったってなるようなきっかけは無くすつもりだからそのままで通す事になると思う・・・それに素を出したって以前の時の事やルミナシアの事を口にする訳にもいかないから、いきなり変わった訳を問われないようにするためにも素を出さない方がいいとも思ってるんだ。俺は」
「・・・そう、貴方はそう考えているのね」
少しして考えをまとめたルークは素は出さないと複雑な表情を浮かべつつ、ジュディスの確かめるように向けられる視線に自身なりの根拠を痛いと感じる過去を交えて話す。そこまで話を聞いてジュディスは確かめるような視線を納得に変え、頷いた。ルークの紛れない本音を聞けたことで。








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