焔と預言の世界の行く末

「私に構っていてよろしいのですか?導師である貴方は何かと顔見せで忙しい筈だと思いますが」
「いえ、僕はもうあらかた挨拶を済ませてきましたから。それに今の僕は導師として教団のトップに立っているというよりは、象徴みたいな物といった方が正しいのでこう言った場での顔合わせが主な役割です。貴方とこうして顔を合わせるのも僕の役目ですから気にしないでください」
「えぇ、分かりました」
ジェイドはそんなイオンに皮肉とも自虐とも取れるような事を口にするが、全く気にしてないとばかりに笑顔を浮かべて返す様子に頷いて返す。



・・・この三年でダアトは変わった。いや、変わらざるを得ない状況になった。預言が詠めなくなり、ローレライ教団の形態が維持出来なくなった為だ。

その為に今のダアトはイオンは年齢的な事から象徴的な存在になり、実質的なトップはトリトハイムが勤めている。モースがいない状態で次点の存在は誰だとなって、そこから繰り上げる形となってだ。

だから今のダアトはどう立て直すのかも含めて模索中なのだが、こういった顔見せが必要な場ではイオンが基本的に足を運ぶことになっていた。実務を担当しない分、象徴としての役割を果たしたいというイオンの言葉もあってだ。

そしてそんな立場をイオンは悪くないと思っていた・・・自分のやれることをやることに一生懸命な部分こそ変わってはいないが、それでも三年前から出来ることは少なかったと思っている。しかし今はそう言った重荷と思っていた役割がない上に与えられた役割に従事すればいい分、心に余裕も多大に出来ている為に。



「・・・ところで、ティアはどうしたのですか?三年前にグランコクマに来て以降、全く姿形も見ていないのでそちらで押さえ付けているのですか?」
「ティア、ですか・・・彼女は貴殿方の元に行った後だと思われますが、その後の行方は分かっていません・・・」
「行方が分からない・・・?」
そんな中でふと思い出したとばかりにティアの事をナチュラルに押さえ付けると口にしてから聞くジェイドに、イオンが若干表情を暗くして答えた中身に眉を寄せる。
「・・・彼女がルーク・・・今あちらにいる方ではない彼の事を探したいと僕達に切り出し、それを断った後彼女はダアトから姿を消した所までは僕の耳にも入っていました。ただそこからは彼女がダアトに戻ってきたとの報告はありませんでしたし、実際に僕の所に姿を見せてくるような事もありませんでした」
「ふむ・・・となればグランコクマを出て、このバチカルに向かった後で姿を消したということですか?ルークを探すのに協力してほしいと言っていましたが、私達に断られた後に来たこのバチカルでもおそらくインゴベルト陛下達もそれを断ったと思われます・・・ですがそうだと言うなら何故彼女は以後の消息を絶ったのでしょうか?当時の彼女の様子から考えて、ルークの事を諦められるはずがないと我々の協力を求めることはやめないはずだと思うのですが・・・」
「僕達も彼女がダアトを出たと知った後にそうなるだろうとは見ていました。ただそれと同時に多少可哀想ではあるとは思いましたが、当時のトリトハイムがティアの神託の盾からの在籍の抹消を決めて帰ってきた時にそれを伝える・・・と言ったことを聞いた時はそうするしかないとも考えました。僕達は探さないと決めたというのにその考えに沿ってないというのもありましたが、彼女があまりにも神託の盾として働くことを放棄しすぎていたことからもう情けをかけることが出来ないと言われて・・・」
「まぁ妥当な所だったでしょうね、それが。と言うよりは彼女が謡将を襲いに来た時から、彼女は個人的な事の為に時間を使いすぎて神託の盾としての活動などほぼしてないも同然でしたから、神託の盾に在籍させない言い分としてそれらも使えそうだとは思いましたが」
そこからいかにティアの行方が分からなくなったかを話す中で神託の盾からの除名を言い渡す用意があったと苦く話すイオンに、妥当だと言いつつ更なる理由もあっただろうとジェイドは漏らす・・・当時のティアは神託の盾としての活動をしているというよりは、個人的な気持ちでしか活動をしていなかったという理由があると。









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