焔と預言の世界の行く末

・・・アッシュと会う流れでナタリアとも会話をしたジェイドではあるが、アッシュの事を除いた上でなら別にナタリアは問題ない対応はしてくれた。この辺りは王族としての生活に染まっていたナタリアからすれば然程問題ではなかった。

だが興味がてらにアッシュの事を世間話のように聞こうとしたのだが、その時にそれまでと違って痛みを我慢するような表情に一気に変わったのをジェイドは見た。

そしてその姿を見てすぐにジェイドはアッシュについて聞くことを打ち切った。その事にいいのかとナタリアは戸惑いながら口にしたが、別に問題ないといったように振る舞いながら適当な話題で話を反らした上でしばらくしてナタリアの元からジェイドは離れていった。



(ナタリアは胸を張ってアッシュを愛していると、心からそう言えるとでも思っているのでしょうか?・・・百歩譲って引け目があるからアッシュに対して強く出れない気持ちがあったとしても、私という他人に少し触り程度に話を聞かれただけであれではそう言ったことがあると踏まえても、心の底からアッシュを愛しているからというよりは単に恋心が終わったことに気付く事から目を背けているようにも感じますね・・・)
そこからジェイドはナタリアが盲目になっているのではなく、敢えて目を反らしている可能性についてを考える。



・・・アッシュもナタリアも、かつての約束を覚えている事に加えて互いに想いが途切れてないということから三年前は見ていてもどかしいようなやり取りを繰り広げていた。だが三年が経ち、もうルークもいないというのに全く変わらないアッシュの姿にナタリアが思考としてはともかくとしても、本能でアッシュに対しての気持ちが少しずつ離れているのではとジェイドは考えていた。

この三年で変わらないアッシュの様子を見て、ナタリアもいくら引け目なりなんなりがあったとて多少はアッシュに対して物を言うことは出来ただろう。ルークがいないからこそ、自分達が次代のキムラスカを導かねばならないからこそだ。

しかしアッシュはナタリア相手だからこそ大いに発言や態度に気を使ったように返しただろうが、結局というかナタリアが関わらなくなればジェイドが見たように腹芸が出来ないばかりか露骨に不機嫌さを見せるといった有り様である。

・・・そういったように考えればこの三年、アッシュが戻ったことにナタリアはただ幸せばかりを感じていた訳ではないだろう。むしろ主にルークの事を筆頭として変わらないアッシュに辛さを感じていた場面も多々あっただろうとも推測出来るが、それでも過程はどうあれ本物の『ルーク』であるアッシュが戻ってきた上で婚約も継続している・・・そう考えればナタリアがアッシュの事を好きだからと半ば無自覚の状態で自身に暗示をかけ、様々な事があるから都合の悪い部分からは目を背けているとジェイドが見ても何らおかしくはないことだった。



「ジェイド・・・お久しぶりです」
「おや、イオン様。これはお久しぶりです」
そうしてゆっくりしていたジェイドの元に現れたのは三年が経って幾分か青年として成長したイオンで、ジェイドは穏やかな笑みを浮かべる形で返事を返す。ナタリアとアッシュについて考えていた事をおくびにも出さないような笑顔で。









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