焔と預言の世界の行く末

(それに比べてアニスは大人しいものだ。まぁ大人しすぎるとも言えるが・・・何となくその理由も分かる気はするがな。大方ダアトに残した両親の事だろうが、流石に両親の事は多少重いだろうからな・・・)
それで次にピオニーが思い出すのはアニスの事だが、そこに付随する両親の問題についても思い出して自身の気持ちが重くなるのを感じる。



・・・ガイと売って変わってアニスは大人しいものだった。ルークについてをこだわったりしないし、仕事も真面目に取り組んでくれる。元々導師守護役という多少特殊でこそあったが軍属であったために、軍の見習いとしての仕事も。

ただそんな真面目さに反して表情を笑顔にしたことはない・・・そういった報告が入ってきたことが多少ピオニーは気になった。その為に一度アニスと話をしてみようと呼び出してみたのだが、その会話の中でダアトというか両親に対する複雑な気持ちをピオニーは感じ取っていた。

その為にピオニーはダアトへと内密に人を派遣してアニスの両親についてを調べさせたのだが、その内情を知ったことに思わず顔をしかめた。両親は借金まみれの生活を送るばかりか、暴力を振るわれているのに全くこりた様子もなく笑顔を浮かべていると。

・・・その文の中身にピオニーは唖然とした。その立場上借金などに縁がないピオニーだが、人に金を借りることの是非についてはちゃんと知っているし金額の大小の感覚もちゃんとしている。だがそれらを全く持っていないようにしか感じることの出来ない両親の様子に、これがアニスの懸念なのだとピオニーは感じた。



(こちらに残る事を選んだことは自分の安寧の為だが、そうすれば両親の事を見捨てる事になってしまう・・・だが借金をして暴力に晒されても平気だと笑っていられると言うなら、アニスもそれに巻き込まれるというかそんな事を止めるようにと説得しても効果がないとなる可能性は極めて高い・・・戻れば地獄だが、戻らないという事はそんな事になっている両親の事を見捨てているような感覚になる・・・ままならん気持ちを抱えて生きてきたのだろうが、影で事情を知っただけの俺がそれを助ける訳にもいかんだろうし、根本的な解決になるとも思えんからな・・・精々俺がやれることはこのマルクトでちゃんと働ける場所をアニスに提供する事くらいだ・・・)
そして更に考えを深めるが、アニスの問題に深入りは出来ないと言うかしない方がいいという結論しかピオニーは思い浮かばず、苦い気持ちを感じる。うまい打開の案を授けられない事に関してを。



・・・ピオニーが考えた事の中身に間違いはない。ただそこに足りないものがある。それはアドリビトムのメンバー達により両親を一時的に拐われほぼ強制的にグランコクマに残らされたと言うことに、両親は然程重く事態を捉えないままにダアトに戻らされたことだ。

ダイクロフトにいた時も部屋から出ることが出来なかったこと以外はさして不自由もなかったどころか、親切にしてくれたと考える始末だ。全く自分達が何の為に拐われたのかを考えていなかった辺り、想像以上に安穏とし過ぎているが・・・だからこそ戻ってきても何も考えていないばかりか、借金をまた繰り返すだけでなく暴力を振るわれても笑っていられるその姿は最早異常と言えた。

最初こそは何故とは感じただろう。今までは優しくたくさんお金を貸してくれたのにと。しかし返済の義務を果たそうとしないばかりか、更に金を借りるような事をするような奴等に遠慮する気はないと言われてすんなりと納得してしまっていた。お金を借りたのにちゃんと返すような様子が見えないからそうしたのだと言われ。

だが前の借金が帳消しになっても、ダイクロフトから戻った後にした今の借金も一般家庭では一朝一夕に返せるような額とはなっていないのは調べにより分かっている・・・そんな状況で笑顔を浮かべているという両親の元に、例え裏の事情を知らないとはいえ簡単にアニスを返すのは酷だとピオニーは感じて帰す訳にはいかないと考えていた。元々アニスがイオンのスパイをしていて、タルタロス襲撃のきっかけを作ったということを知らないままに・・・









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