終幕は怒りと共に引く

「ただ・・・少し俺達の思った展開と違うようになったのは誤算と言えば誤算だったな」
「えぇ。本来であればリーガルさんを迎え入れた後すぐにダイクロフトを沈めてルミナシアに戻っていた筈なんですけどね・・・まぁティアの事があったので、仕方無いと言えば仕方ありませんでしたよ。ローレライがユリアの契約を無効化したと直接理解出来るように言っていなければ、それこそプラネットストームの復活に無理矢理にでも踏み切った可能性がありましたからね」
ただそこでウィルが誤算と言ったことにジェイも同意する。それはティアの事だと。



・・・元々ルミナシアにルークを助ける為に来たアドリビトムのメンバーだが、元の生活もあるためにある程度帰るための予定というものを立てていた。そして大体は予定通りと思われていたのだが、その予定を大いに狂わせてくれたのがティアなのである。

今までも散々その姿勢から様々予定外な行動を取ってきたティアだが、特にルークがもう見付けられない状態になったと知った後の状態はアドリビトムのメンバーから見てあまりにも危険としか言えなかった。

故に多少帰還の予定を繰り下げることになるが、ローレライと話をした上でティアの後始末をつけてから戻るようにしようと一同は話をした。それでティアの行方に関してを密かにローレライから報告を受けながら動いていたのであるが・・・



(・・・やはりジュディスさんとティアの間で何が起こったかについては問い質さない方がいいですね。まだユーリさん辺りはいいかもしれませんが、エステルさん辺りが濃い血の匂いをさせていたのかを聞いたら面倒なことになるでしょうし)
その中でジェイは改めて感じる。ジュディスが起こしたであろうことを表沙汰にすることの面倒さを。



・・・実際の所、ローレライがユリアの契約を無効化したという事実さえ知れば後はティアのことは放っておけば良かったとジェイは思っている。
何故ならもうどうあがこうがティアはローレライの力に存在を頼れない以上、過去に戻ることなど出来ないしルークの元になど行くこと出来るはずもない状況だったのだ。それに今までの経緯を聞くだけでもアッシュ達との不和は確実で協力など望めるべくもない上、各国の首脳陣も精々イオンがお人好しを発揮してどうにか出来ないかと思うくらいでまずまともにティアに力を貸すなど有り得るはずもない。

そんな状況だからローレライがユリアの譜歌がもう効果を為さないと言えば、後はどうティアが頑張ろうが徒労に終わるばかりか展開次第ではキムラスカとマルクトのどちらかに囚われることすら有り得てそれで終わる・・・ジェイはそう思っていた。

しかしジュディスはそういった末路になることを知ってか知らずか・・・いや、ある程度は放っておいてもそういったことになると見越していたとジェイは見ている。大人の雰囲気を滲ませのらりくらりと真意を掴ませない所があるジュディスではあるが、それでも持ち合わせている知識に頭の良さはアドリビトム内でも高い位置にある彼女ならそれは分かっていただろうと。



(・・・考えられるのはジュディスさんがティアに対して何らかの負の感情を持っていたから、ですが・・・考えづらいですね、普段のジュディスさんの事を知っているだけに・・・)
ただそれでジュディスがそうなる理由を思い至れないジェイ・・・この辺りはまだ大人になりきれてない少年であることに実行者として関わっていないこと、そして何よりジュディスの人に見せる事を躊躇う程の本気の怒りを見ていないが故の事である。









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