終幕は怒りと共に引く

「それとリーガル、ありがとう。貴方のおかげでアクゼリュスの人達の援助が滞りなく出来たわ」
「どちらかと言えば私はローレライの求めた役割をただ演じただけといった方が近いのだがな。現にローレライの疑似レプリカの後を継いだだけに近い」
「リーガルさんはそうおっしゃいますが、流石にレザレノカンパニーを率いているだけあって手際が良かったですよ。おそらくリーガルさんでなくローレライが活動していたなら、あれほどすんなり行っていたか怪しいとローレライ自身も言っていましたからね」
「そう言ってくれるとありがたい」
それで次はリーガルへの礼を述べるリフィルに大したことではないと返すが、ジェイの気遣いの見える言葉に笑顔を浮かべる。









・・・元々からそうだが、ダイクロフトの中には食糧を作るための設備など存在しない。故にヴァン達の行動によりアクゼリュスの人達を危険に晒さないと同時に、自分達の分も含めた食糧を大量に用意するにはどうすればいいのかという問題があった。

そこで解決案として出てきたのが、先程にもあったローレライによるリーガルを模したレプリカをケセドニアに潜り込ませ、そのレプリカと入れ替わる形でリーガルがその地位に入るという物だった。ルミナシアでレザレノカンパニーという名うての企業を興し、その敏腕を持って食糧の準備であったりをしてアドリビトムのメンバーの助けを陰ながらするために。

そしてそんな立場に立ったリーガルはアドリビトムのメンバーの思う通り、いやそれ以上に役に立った。食糧の供給に関してもそうだが、アスターとの渡りをスムーズにつけられていたことにより。



・・・アスターはやり手の商人であり商機を見逃さないこともそうだが、同時に不穏な空気を察することにも長けている。そんなアスターを欺き続けながら行動するには、ローレライだったなら無理だったとローレライ自身確信していた。巧みな話術に人を見る目を持つアスター相手に、商人という立場でないローレライが同じ土俵で立ち向かうのは。

そんなある意味ではヴァンやモースよりキツい相手であるアスターに対し、リーガルは敢えて真っ向から取引を持ち掛けた。その時の話の中身を要約すればケセドニアで自分の担当としていた交易関係の全てを贈呈するから、しばらく私のやることを黙認してほしいと。

この時の話の中身に関しては詳しくはリーガルは語ろうとはしなかった。その中身を語るには濃密な時間があって一朝一夕には説明が出来ず、かなり難しい物があったということで。そんな空気を見てダイクロフトの待機組も変にその事を追求することなく単純にリーガルに賛辞を送った上で、人気のない時間と場所を確保した上で食糧などの必要な物資を密かにダイクロフトへと運び込んでいった。

そしてダイクロフトからアクゼリュスの住民がマルクトに戻され、ローレライが音譜帯に行くとなったことからリーガルは約束通りアスターに自身の持つ全ての権限を委託してケセドニアから去ったのである。

・・・ただリーガルは、アスターが何も事実を知らぬまま自身を見送ったとは思ってはいない。全ての事実は知らずとも、何らか心当たりくらいは浮かべていることだろうとは感じている。だがそれをハッキリ口にはせずにケセドニアに留めようとしなかったのは、二人の代表という形で二分されていた利益を自分の元に一極化出来ると考えての事だとリーガルは見ている。何故ならアスターの根本は商人であり、自身の利益を追求することに飽くなき想いがあるということから様々な不信な点には目を瞑ったのだと・・・









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