焔の決意と知りし者達

『そうだ、ルークはもう戻ってはこない・・・だからせめて後はルークの意志を汲んでやって欲しいのだが、出来ればライマの者達にはオールドラントに戻したことは言わないで欲しい。もうルークはこちらに戻ってはこれないのだからな。向こうの我がこちらに干渉しようと思わない限りは』
「向こうのローレライがって、なんでそんな権利を持ってるんだよ・・・?」
『こちらからルークを送る際、事の経緯を向こうの我に地核から出られる手助けをすると共に伝えておいた。その結果出来る限りルークの助けになるよう動くとの事だが、それがルークの幸せに繋がらぬなら向こうの我も承知しない・・・もうどちらの我もルークが傷付き不幸になることなど望んではいないのだが、そう考えれば現時点でルークの居場所がバレればライマに強制送還という結果が見えるルミナシアに向こうの我がこちらに送ってくるなど到底思わん。そして一度向こうに送ってしまった今、こちら側に引き戻す為に我が力を使っても無理だ。おそらくまず向こうの我の邪魔が入るであろうからな・・・そうなれば向こうの我が根を降ろす世界の分で我の方が力としては不利だ』
「っ・・・つまり、もうルークに会えることはまずない・・・と?」
『そう言うことになる』
「「「「・・・」」」」
そんな二人に答えるようローレライがルークを気遣った上で言葉を紡ぐが、ロイドはまだ諦めた様子を見せず挑むような目で質問をぶつける。だが向こうの自分もとルークの幸せを強く望むローレライの心にクレスが否定を望むように重く確認を取ってきたが、迷う間もなく肯定をローレライは返す。その答えに再びアドリビトムのメンバーは重い空気に包まれた。
『・・・と言うことだ。後はライマにその髪と手紙を送って欲しい。ルークの望むようにする形でな』
「待って、ローレライ・・・まだ聞きたいことがあるの」
『・・・なんだ?』
「戻れないというのはともかくとしても、何故アッシュ達にはその事を話さないようにして欲しいのかしら?彼らにもその事を知る権利はあると思うのだけれど・・・ましてやそのオールドラントという世界でも仲間だったというのならね」
「あっ・・・確かに私もそれは思いました。何も言わないままなんて、ティア達がかわいそうです!」
ローレライはただその空気に念を押すようライマの者達にはルークの事を言わずにと再度告げるが、ジュディスから投げ掛けられた疑問にエステルも同意を示して抗議の声を向ける。ティア達も知るべきだと。
『・・・かわいそう、か。そのような気持ち、我はルークには抱いてもあの者達には抱けんよ』
「・・・え?」
だが今までと明らかに一線を画したローレライの寂しくも静かな怒りの含まれた声に、エステルだけでなく周りのメンバーも何をと目を丸くする。
「・・・どういう事かしら、ローレライ?」
『・・・そうだな、論より証拠だ。まずはその手紙に髪をライマに送り届け、その上でアッシュ達それぞれに返信を求めるような手紙を出してみよ。中身は我にルークの真実の事を知らせぬようにだ』
「・・・そうすれば説明してくれると言うのかしら?」
『あぁ。だが手紙が往復するのに数日はかかるだろう。我はその日になるまでは姿を消すが、その時になれば再びここに現れよう』
「そう・・・アンジュはそれでいいかしら?」
「・・・えぇ、まだるっこいとは思うけどね。それに事実をありのまま言っても手紙だけじゃ信じられないでしょうから、段階を踏んだ方がいいわ」
ジュディスがその言葉の真意を聞くが、少しの間をあけ手紙を送って反応を見てから話すとローレライは返す。その返答にジュディスはアンジュに確認を取り、アンジュも考えた上でそれが都合がいいと頷く。
『そうか・・・なら我はしばらく姿を消す、ではな』
‘カッ’
「うっ!・・・・・・消えた・・・」
「・・・ローレライの言葉が正しければ返事が返ってきた時にまた来るのだろう。気にする必要はないはずだ」
「・・・そうね」
そんな返答にローレライは納得しつつさっさと光を放ち周りの者の目を眩ませた後、場から消えた。アンジュがその光景に呆然とする中、クラトスの声が届いてきた事でそれ以上何も言わず頷くに留めた。










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