終幕は怒りと共に引く

「貴女はルークに理想だけを求めた。ルークが他者に対してどう考えているのか、そしてどう取り繕った態度を取っているのかを考えずに自分の求めている物だけを要求するように」
「どう取り繕うって・・・」
「例を上げるなら、貴女がイオンとルークに対して取る態度の違いのような物よ。誰に対しても態度は変わらず一貫して心の内をさらけ出す・・・そう言ったことだけで生きている人の方が圧倒的に数は少ないわ。そして貴女も人を見て自分にとって偉いかどうか、そう判断して態度を変えている・・・ルークもそうなのだということを、公爵達の存在も踏まえてそうではないと貴女は言えるかしら?」
「っ・・・!」
ジュディスがそのおかしいという理由を口にする中でティアは取り繕うという部分に気が行き、自分の態度の部分からルークにとっての公爵を引き合いに出すとハッとしたようになる。懇切丁寧な説明の中身に流石に最初に会った頃のルークでも誰かれ構わず横暴ではなかったと考えた為に。
「そう。大抵は誰でも他者に対して取り繕った態度を取るもので、それがどれだけの規模に質になるかはまた人によって違うもの・・・貴女は勝手にルークがそういったことをしない人だって考えていて、ルークが隠していたことだとか内心を明かした時にそれが悪いことだといったように貴女は責めた。貴女自身が言いたくないことを決して明かそうとしないこと、自身が取り繕っていることなんて考えずにね」
「・・・それは・・・」
「貴女がどんな考えを持っていたかにその中身になんて、最早興味に意味はないわ。重要なのはルークにもそういったものがあって、その態度にある内心を推し量ることもそうだけれどいかに自分がどうしたいかにこうしてほしいかという気持ちしか貴女にはない・・・そんな態度を一度や二度押し付けられるだけならまだしも、何度も何度も自分がこうするのは間違ってないという取り付くしまのない状態で言われればそれは彼だって諦めるわよ。貴女の心変わりを望むような事なんてね」
「!?・・・それって・・・私がルークの事を全く考えていなかったから、ルークは逃げたって言うの・・・!?」
「じゃあ貴女はルークの為にとは言ったけれど、そのルークがどう考えているのかにその意志を尊重させたいといったような考えは少しでも浮かんだかしら?ルークが取り繕っている姿なんかじゃなく、本心でこう考えているならそれを助けたい・・・そう自分の理想に思うような考えに沿わせるのではなく、ルークの考えを尊重したいという気持ちを抱いた考えは」
「っ!?・・・それ、は・・・」
それらを踏まえた上でいかにルークが本当はこうではないかと考え尊重したのかどうかを問い掛けるジュディスに、ティアは一気に声を詰まらせ視線を背ける。



・・・ティアが言葉に詰まるのは当然、と言うよりは正に正解だからだ。ジュディスが問い掛けはしたが、ルークの気持ちなど全く考えていないということに関しては。

その理由については・・・やはりというべきか、ティアにとってはワガママなルークなど望んではおらず、あくまで以前の髪を切って以降の成長したルークになってほしいという気持ちがあったからだ。

しかし理想を追い求めるあまりに現実を見失う、という典型的なパターンにティアはハマってしまった。ルークについてを多少疑問には思えども結局は髪を切る前のルークがベースになっていると思い込んだ上で、ろくに考え込みもせずに髪を切る前のルークと同じような態度になっていた。

髪を切る前のワガママなルークなのだから自分の言うことを曲げずに強く言うのが当然と、そう言ったようにティアは考えていたのだが・・・それがいかに自分本意であったかと聞かされ、ティアは衝撃を感じざるを得なかった。今まで考えてもいなかった考えを受けて。









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