終幕は怒りと共に引く

「どうやら少しは思うところはあったみたいね・・・でももうそれももう意味はないわ。これで貴女はもうルークと会えることはなくなるのだから」
「っ、逃がさないわよ!ここで貴女を逃すわけにはいかない・・・今ここで逃がしてしまえば、私はずっと後悔するハメになるのが分かる・・・!」
「だから私を逃がさない、と?・・・やっぱり私一人で来て正解だったわね。あの子達にこれからの光景なんて見せたら、気分が悪くなるのは間違いなかったでしょうし」
「・・・え・・・?」
ジュディスはその姿を見てこれで終わりといったように言うのだが、そう聞いた上でもルークを諦めきれないと感情だけで食らいついてくる様子に、ジュディスは意味深に呟きながら槍を構え直しティアはどういうことかと戸惑いに止まる。



‘ゴキィッ!’



「がは、ぁっ・・・!?」
・・・次の瞬間、ジュディスは勢いよく踏み込んで槍の刃の部分ではなくその下の柄の部分でティアの横腹を振り切ってその体を吹き飛ばし、鈍く骨が折れる音と共に苦悶の声を上げたティアは地面に倒れこんだ。
「・・・ゴホッ・・・ぐぅっ・・・!」
「・・・まぁこれくらいは立つわよね。けど結構なダメージは食らったから、まともに戦うのは厳しいでしょうね」
しかしティアも以前の経験があったことが効いてか横腹を押さえ咳き込みながらも立ち上がるのだが、ジュディスはむしろ当然とばかりにティアを見据えながら近付いていく。
「っ、待って!何で貴女はそこまで私を敵視するの!?貴女には私の事もそうだけれど、ルークの事にそこまで関わる理由なんてないはずよ!」
そんな姿にティアは慌てて腹部を押さえている手とは反対の手を前に出して待ったをかけて自分に対する態度の理由を聞く。疑問があるというのもある以上に、単純にジュディスをどうにか止めないとまずいといった焦りを浮かべながら。
「・・・まぁ正直に言うなら、確かに最初はそれほどの気持ちは無かったわ。貴女に対する気持ちも今の貴女に向けているような物でも無かったもの・・・でもね?時が経って彼に接すれば接するほど、私は感じていったの。彼に対する募る想いが私の中で膨らんでいくのを、ね」
「なっ・・・なんで、あのルークに・・・!?」
「あのルークというけれど、貴女が思うのはどのルークかしら?自分にとって都合のいい反応を取ってくれる彼かしら?ワガママを言わない彼かしら?自分には何もかも打ち明けてくれて、分かりやすい態度を取ってくれる彼かしら?」
「・・・それ、は・・・」
ジュディスもその問いに足を止めて思い返すようにしながらも今までと違いルークの事を想いながら柔らかい笑みを浮かべながら心中を明かすが、信じられないといったように反応するティアに意趣返しとばかりにどんなルークがいいのかと問うと途端に視線をさ迷わせる。
「答えにくいでしょう?あえて答えにくいように言ってみたもの・・・でもその中に貴女の言うようなワガママだったり傲慢なお坊ちゃんなルークを入れなかったのは、貴女にとってそんなルークはいらないと思ったからそう言ったの・・・そして私が好きなのはそんな一面も含めてのルークの全てよ」
「なっ・・・!?」
「そんな部分を好きになるのはおかしいと思っているのかしら?けれど私から言わせてもらうなら、人の事を一面だけ見て嫌いな一面を理想を盾にして押し潰そうとしていた貴女の方がおかしいわ」
「わ、私の方がおかしい・・・!?」
ジュディスは意地悪い問い掛けをしたものの謝る気はないと言いつつ自分の考えを存分に口にしていくのだが、自分の方がおかしいと言われて心外だとばかりに驚愕する。自分は間違ってないと言わんばかりに。









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