終幕は怒りと共に引く

・・・ティアは困惑した。何故ダイクロフトに戻った筈のジュディスがこんな所にいるのか、何故一人でここに来たのかと。だがすぐにキッと視線を鋭くし、ジュディスを睨み付ける。
「・・・どうしてこんなところに来たのかは知らないけれど、こうして顔を見せたのは好都合・・・もう一度案内してもらうわよ、ダイクロフトまで・・・!」
・・・何故ここに来たのかなど今のティアにとっては些事いかの何物でもなく、それより重要なのは唯一ルークに繋がる道を今ここで確保すること。
ティアは杖を前にかかげ戦闘も辞さないと強気な態度を見せるが、ジュディスはその様子に笑みを浮かべる・・・余裕そうでいて、どこか不気味さを感じさせる笑みを。
「・・・もし案内しなかったら、どうなるのかしら?」
「決まっているでしょう・・・痛い目に合うだけよ。ダイクロフトに案内してもらうから殺しまではしないけれど、降参するなら早目にするようオススメするわ」
「貴女が、私を痛い目に合わせる?・・・フフフ、面白いことを言うわねティア?」
「・・・えっ・・・?」
そのままの笑みでどうするか問うジュディスにティアは直接的に脅しをかけるが、そこで笑みが余裕そうな物から・・・残酷に冷たさを感じるものに変わったジュディスの笑顔に、ここでティアも異常に気付く。少なからずジュディスの顔を見てきた筈のティアだが、今までの彼女とはあまりにもかけ離れた表情だと感じた為に。
「・・・さぁ、私を痛い目に合わせるのでしょう?遠慮なくかかってきていいわよ?ただし・・・私も遠慮はしないわ」
「えっ・・・!?」
だが戸惑う間などそう与えられる事もなくジュディスが槍を構えてきたことに、ティアの困惑が一層強まる。
「あら、私が刃物をちらつかせられたら怯えて体を震わせるような女だと思っていたのかしら?・・・まぁそれならそれで構わないわ。私も痛い目に合うのは嫌だから、精一杯抵抗させてもらうわよ」
「・・・っ!」
その困惑の理由を察しながらジュディスが笑顔で距離を詰めてくる様子にたまらずティアは後ずさる。相手が近接戦を得意するタイプであることもそうだが、何よりジュディスの圧に圧されてしまう形で。


















・・・ただそうして圧されはするものの、最早ここで引けばルークに繋がる道がなくなる事からティアは退路はないと気持ちを奮い立たせてジュディスに挑みかかった。

だがやはりと言うべきか、接近戦のスペシャリストであるジュディスと中距離からの攻撃が主であるティアでは勝負になる訳もない上、強力な譜術に譜歌を始めとした音素を必要とする技もプラネットストームの停止により全く使い物にならない・・・そして何より、最早得意な距離や相性など問題にならないレベルでジュディスとティアの強さには大きな隔たりがあった。一方的にティアが傷だらけになり、ジュディスはかすり傷すらついてないほどの隔たりが。



「くっ・・・!」
「あらあら、もう終わりかしら?痛い目に合わせると言ったのは嘘だったかしら?」
・・・数分も戦った所で身体中についた傷で痛みに顔をしかめながらも戦意をまだ目に浮かべるティアの姿に、ジュディスはまだ笑顔のまま挑発めかせた言葉を向ける。余裕だという状態を隠すこともなく。









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