表向きの終幕、裏で起こる奔走

「・・・そう言うことだ。後はアッシュ達共々ここから出よ・・・もうこちらから言うことは何もないのでな」
「「「っ・・・!」」」
そしてこれで終わりとアッシュ達も含めて謁見の間から出るように拒否を許さぬよう強く言うインゴベルトに、三人は複雑な表情を浮かべながらも何も言えなかった。



・・・それで結局インゴベルトに何も言い返せないまま謁見の間を出た三人は城の前に出る。
「・・・チッ、こんなことの為にわざわざ呼び出されるとはな・・・」
「っ、何を言っているのよ!貴方もルークの元に行こうって考えていたくせに!」
「テメェが勝手に言い出したことに反応しただけだ!俺はアルビオールとやらの存在なんざ気にもしてなかった!」
「ふ、二人とも・・・止めてくださいまし、人の目があります・・・」
噴水の前に来て苛立ちにぼそりと呟くアッシュにティアが食って掛かり即座に言い合いに発展し、ナタリアはアッシュの肩を掴んで必死になだめる。
「・・・フン、もういい。こんな女にこれ以上関わる理由もない・・・俺はもう屋敷に戻る、が・・・二度と俺に叔父上達の前に姿を現すな、ヴァンの妹。叔父上はお前に対して情けをかけるような事を言ったが、お前の様子を見る限りでは諦めるつもりもなさそうだからな・・・だから父上に話をしてお前が俺達に会いに来ても追い払うようにしておく」
「なっ・・・!?」
「フン・・・!」
アッシュもナタリアの言葉で多少落ち着いたかのように見えた・・・が、その後に告げた言葉にティアは絶句してその姿に嘲笑を浮かべながらアッシュは屋敷へと足早に退散していく。最後にいい反撃が出来たとばかりに。
「・・・ナ、ナタリア・・・」
「・・・ごめんなさい・・・本音としては私もルークとアッシュの事をどうにかしたかった・・・でももう私は、無理なのです・・・そして、私の前にももう、姿を現さないでください・・・では・・・」
「ナタ、リア・・・」
それで場に残ったナタリアに対してティアはすがるような目を向けるが、目を反らしながら拒絶を返し足早に城の方へと逃げるように姿を見て愕然としながら手を伸ばすしか出来なかった・・・共にルークを探しだしてくれた可能性のある最後の希望であったナタリアまでもが、自分を見捨ててしまったという絶望の事実に。

















(・・・ここ、は・・・?)
・・・茫然自失となり、ナタリアに別れを告げられた後からどう自分が動いていたことを考えることが出来ないままにフラフラ動いていたティア。
そんな彼女がふと意識を取り戻し辺りを見渡すと、周りに街や村など見えない平原部であり自分が何故こんな場にいるのかとティアは疑問に思う。が・・・
(・・・もう、皆頼れないし拒否された・・・ルークにも逃げられた・・・ならもう、もう一度過去に戻るしかない・・・!)
すぐに考えは過去に戻ることへと移る・・・自分への拒否に次ぐ拒否を自分の失敗を失敗と思わないからこそ、ローレライからもぎ取っていた珠を手にしてなりふり構わず再び過去に戻ろうと地面へと叩き付ける。
‘バリィンッ’
「・・・これでローレライが私の元に来れば、私は過去に戻るのよ・・・!」
珠が粉々に砕け散ったのを見て、すぐに上を見ながらティアはローレライが来るのを待ちわびる。血走ったよう、それでいて狂気を滲ませるかのような表情を浮かべながら。



・・・それで数分後。ティアの元へとローレライが音譜帯から降りてきて姿を現した。









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