表向きの終幕、裏で起こる奔走

「・・・まぁよい。そこまで言うのであれば、今からアッシュにナタリアも呼んでやる。そこでお前にとっても重要な事実を話すから少し待て、よいな?」
「え・・・は、はい・・・?」
だがここで何故か二人を呼び出して話をするというインゴベルトに、ティアはどういうことか分からない状態でただ頷くしか出来ずに返す。









・・・それでインゴベルトにより二人が呼び出されるまでの間、ティアは静かに黙って待っていた。何がどういうことなのか、戸惑いも大きかったのもあるしインゴベルトに気安く話を聞けないという状態でもあったために。
そして程無くして、二人は謁見の間へと来た。
「・・・どのようなご用でしょうか、叔父上?呼び出された時にはヴァンの妹がいるとはお聞きしましたが・・・」
「そうですわ、お父様・・・」
それで二人揃って並びつつ、対面にいるティアに対してどこか刺々しい視線を送りながらインゴベルトへ用向きを問う。
「・・・そなたら二人を呼び出した理由に関してだが、今この場でだからこそ言わせてもらうがアッシュ・・・そなたからしてのレプリカルーク、あのルークについてだ」
「っ!・・・あの屑について、ですか・・・!?」
「っ・・・」
インゴベルトはそんなアッシュに向けて敢えてルークとアッシュの存在を分けるようにルークの事を強調して言葉をかけると、やはりというべきかアッシュは苛立ちを抑えつつ何をと言いナタリアは辛そうにその姿を見つめる。
「・・・結論から言わせてもらう。ルークはもう探してもこの地上にはいない。いる場所は・・・ダイクロフトの中だ」
「「「っ!?」」」
だがインゴベルトが告げたまさかの言葉に、三人が三人とも驚愕に目を見開いた。居場所が特定は出来たが、そこはダイクロフト・・・というまさかの場所と。
「・・・驚いているようだが、これはわしがルークから直々に聞いたことでダイクロフトの者達とも話し合っての事だとのことだそうだ」
「そんなっ・・・ルークはダイクロフトから降りたって・・・!」
「・・・本当にルークはダイクロフトから降りたのか?いや、降りたとしてももう一度上がっていったという事も考えられぬか?」
「っ!?(そうよ・・・どうして私はその可能性を考えなかったの・・・あの人達が嘘をついている可能性だってあったということを・・・!?)」
そんな反応の三人を見て話をするインゴベルトにティアが反論するが、冷ややかな返答とその中身にハッとする。あっさりアドリビトムのメンバーの言葉を信じてしまったが、馬鹿正直に信じる理由が何もなかったということに気付いて。
「・・・と言うことだ、アッシュよ。そなたが今も尚、ルークに対して負の感情を抱いていることは知っている。だが最早ルークの居場所は分かってはいても、そこ・・・ダイクロフトに辿り着くことは出来んし、ルークもそなたに見付かるような所にわざわざ降りてくることは無いだろうからな」
「っ・・・くっ・・・!」
インゴベルトは次にアッシュへルークの事を探すことの無意味さとダイクロフトには最早行けないと強調して言うと、アッシュは精一杯に怒りを抑えるようにしながらも隠しきれずに歯を噛み締める。もう物理的にルークに手が届かないと、今の言葉でそう理解したことにより。









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